戦闘訓練、終了
※オリキャラ出ます。オリキャラは名前固定で福和依子です。



対敵訓練。平たく言ってしまえばそうだった。
ヒーローたるもの敵と戦うのはほぼ避けられないと考えて良い。その個性がサポート向きだとしたって、それがヒーローであるのなら何かを救うために戦わねばならない事もあるのである。
チームに分かれて、くじにより敵とヒーローに分かれて戦う。
一番最初に行われた戦闘訓練で、緑谷、麗日ペア、飯田、爆豪ペアが対峙し、熱い戦闘を繰り広げた後、出久は保健室へと搬送され、残る三人に対して観衆として見ていたクラスメイト達から……主に推薦入学者である八百万から講評があった。そして彼女の講評を聴いたクラスメイト達は沈黙する他なく、オールマイトさえも震えながらも正解と親指を立てた。
そしてこれまで一度も俯くことの無かった爆豪勝己はその時俯き、閉口していた。一方で沙保はその講評に集中するより、誰にも気付かれないように涙を拭う事に専念していた。
彼らの次はBチームとIチームである。
彼らの第二戦は轟の独壇場となり、ベストも彼ということで落ち着いた。爆豪はその事に、また唇を噛み締めた。
そして遂に沙保のチームの番になった。涙を人知れず流していた沙保と同じチームになったのはこれまで一度も話した事の無い女生徒だった。それどころか彼女の声さえ沙保は聞いたことが無かったのである。
今日初めて聞いた福和依子と言った彼女の声に沙保は聞き覚えがあった。
「あの時の……」
そうだ。彼女は沙保が誰かの個性から守った女の子だったのである。
フェイスマスクを取った彼女は柔らかい笑顔を見せた。
「覚えてくれたみたいで嬉しい。あの時はありがとう」
「ごめんね……あの時は顔が見えなかったから……」
沙保は申し訳なさそうに依子の手を取る。依子は困ったように笑った。
「そうよね。私、あの時顔見せなかったもの」
「……何で?」
「私の個性のせいなの。肉体強化のようなものなのだけど……弱点がわかりやす過ぎて、隠してるの」
「そうなんだ……」
お喋りはここまでである。彼女らは敵チームであり、ヒーローチームはGチームの上鳴と耳郎であった。二人共個性は発現系であり、相手に影響を及ぼすタイプ。彼女達は作戦を立てることなく無効化能力を持つ沙保が核の守りを固め、依子が足留めをするという至極分かりやすい戦法を採った。沙保の守る部分は勿論核の前であり、入り口にはトラップとしてワイヤーを仕込む。足を一瞬止める事が大きな役目であった。
そういうわけで、沙保は依子の個性を一切知ること無く平和にしっかり罠を張ることが出来たのである。だが、そのトラップは役に立たなかった。耳郎と上鳴の個性のせいで場所とトラップはあっさり見抜かれ、依子は肉体強化である為に、とてつもなく相性の悪い相手に屈していた。
そこでどうするということも出来るわけでもなく。沙保は上鳴の放電を受ける前に降参したのだった。勿論講評は上鳴と依子に集まり、耳郎と沙保には非難の声も賛同の声もあまり無かった。沙保はベストという声を貰った。
その時沙保と爆豪の目線が一度だけ交差した。沙保は少しだけ困ったように目を逸らした。
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