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「平塚から聞いたんだよ。最近、浅北組のシマ内で揉め事が起こってるって。俺は浅北さんの弱みになるから、もしかしたら狙ってくる奴がいるかもしれないし気をつけろって。俺が危ないかもってことは、浅北さんなんてさらにヤバイってことだろ?それなのに一人でこんなとこまで来て…」
「平塚がそう言ったんですか?」
「え?…そうだけど…あ、浅北さ、ん?」
「…なにか?」
「いや、あの、なんか怒ってる?」
「いえ、怒ってなんていませんよ」
「明らかにその笑顔怒ってるよな…?」
「怒っていませんよ?」

利一に対してはというあとに続く言葉は発さずに、浮かべた笑顔をいっそう、にこやかにすれば、なんとも言い難い顔で頬を引き攣らせた利一が、一歩二歩と後退る。
その体を強引に引き寄せ腕のなかに抱き込んだ。驚いたように目を瞠る顔が至近距離。
いきなりなんだと問いかける目に笑みで返すと、唇を瞼に摺り寄せグッと抱く腕に力を込める。

「最近連絡をくれなかったのはそのせいですか?」
「だってそれが相手にバレて、浅北さんの不利になったら困るじゃん」
「やっぱり…」

約束を破ったことを怒っているのではなく、利一の不自然な行動は平塚の余計な節介が原因だったのだ。
そう思えば恋愛云々と説教めいた忠告をしてきた三下に対する怒りが余計に膨らむが、それについては後々の話として。いまは腕のなかに大人しくおさまってくれている恋人を、どうやって自宅に連れ込むかを考えなければならない。

二ヶ月も待ってやっと会えたのだ。
これまで耐えに耐えた時間の分を、今日はなんとしてでも取り戻さなければならない。

「とりあえず、俺の家に来ませんか?」



― END ―





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