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人生適当にのらりくらり。
人間関係なんて相手の性格さえわかれば、あとは演技+計算ひとつでそれなりに上手く立ち回れるもんよ?
それでダメならそれとなく距離おいちゃえばいいんだって。
わざわざ揉めたり喧嘩したりするのもね。
感情のぶつけあいとかちょー苦手だし。
うざいじゃんホント。

踏み込まないし踏み込ませない。
大抵の相手ならその線引きに気づくわけよ。
最初は気づかなくても付き合ってくうちに。
ほどよい距離でのお付き合いしましょってね。
それが嫌なら離れて終わり。
いままでそうやって上手くやってきた。
だってのに…。

「あんたの笑ってる顔見ると吐き気がする」
「…んー?」
「だから、吉武さんの笑顔って嘘くさくて、見てると腸煮えくり返るくらいムカツクんですよね」

このとんでもなく失礼な発言をかましてくれたのは、古坂弥太郎といって一ヶ月前から一緒に暮らしてる高校生のクソガキ君だ。
事あるごとに突っ掛かってくる。
それもまた人の反論出来ないとこを、ビシバシと辛辣な言葉でついてくるわけ。

笑顔が嘘くさい?
当然じゃん。だって作り笑いだし。

初対面のときはなんだっけ。
あ、そうそう。
俺、あんたのこと、生理的に無理。
てさ、これから世話になろうっていう相手に普通思ってても言わなくね?

「楽しくもないのによく笑えますね」
「えー、楽しいよ?」
「嘘つき」

御名答。

「いまだって、俺のこと面倒臭いって思ってんでしょ?だったらハッキリそう言えばいいじゃないですか。ヘラヘラ笑ってごまかされるより全然マシですよ」

古坂が高校を卒業するまで預かることになってるってのに、あと二ヶ月もギスギスした環境で過ごすとかダルいし。
それなら笑って流してるほうが楽だと思うんだよね。
思うんだけど、

「面倒くせぇー」

オレのツラの皮も相当なもんだとは思うけど、こいつの直球さもある意味異常のレベルじゃねぇの?
みんな生きてりゃそれなりに、心隠して嘘も誤魔化しもするもんでしょ。
嫌われたくない揉めたくないそんな保身とか、傷つけたくない労わってやりたいそんな思いやりとか。
古坂からはそんなもんは一切感じられない。
ド直球ストレート。
オレとは間逆すぎて、理解の範疇を軽く超えてくれちゃって、まぁなんて面倒な男。
ここまで見事だと、取り繕うのがバカバカしくなってくる。
盛大な溜息を吐いて本音を一言投げつけてやれば、仏頂面をさらに険しくさせて舌打つ相手。
おまえが言えっていったんじゃん。
そんなあからさまに気に食いませんって態度とられてもさ。
オレにどうしろっていうのよ。
あー、もうホントわけわかんねぇ。

なんなの、こいつ。
全然読めないんだけど。
正直すぎてかえって読めないってどんな矛盾ですか。

これから二ヶ月もこいつと一緒に暮らせって、オレの精神修行かよ。
冗談じゃねぇわマジで。
こいつといると、落ち着かねえの、揺さぶられんの。
平坦さこそジャスティス!だって思ってんのに、あーしんどい。
オレの平和な日常カムバックって感じですよ。
あーしんどい。



― END ―





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