キリリク | ナノ


▼ 利一Side






「あの…なにコレ?」
「チョコレートですよ」
「へぇ〜…って俺にはどう見ても卑猥な猥褻物にしか見えな、い…っつーの!!」
「っと、いきなりなにするんですか。せっかくの品なんですから破壊しちゃいけませんよ利一さん」

目的のモノを殴り損ね、振り下ろした拳は鈍い音をたてて畳へとめり込んだ。
浅北さんの腕に守られ怒りの一撃を免れたソレは、無機質な笑みを浮かべてこちらを見据えている。
俺そっくりの等身大チョコレート。しかも裸体。
ホワイトチョコで出来た肌に、乳首と大事なムスコさんだけはミルキーなピンク色。ご丁寧にもムスコさんははりきりサイズになっている。

「わぁ、見事な出来栄えだねー。りいっちゃんのサイズはこんな感じなんだ!かわいー」
「黙れ、神田。俺の男としてのプライドを打ち砕く発言は控えて下さい」
「…………」
「柏田さん、その哀れみに満ちた沈黙やめて貰えます?」
「くだらねぇ」
「おまっ!俺のムスコにくだらねぇはないだろ高梨!!」

いやいや、そんなツッコミを入れている場合ではない。神田、柏田さん、高梨の目の前でチョコレートとはいえ裸体を晒している俺もどき。これはれっきとした羞恥プレイというやつではないのでしょうか。
恥ずか死ねる!!!
こんなプレイで楽しめるほどマゾい心を持ち合わせていない俺は、今度こそと狙いを定め猥褻物なチョコレートをブチ叩こうとするも、止めに入った柏田さんが腕に飛びつき、またもや拳は目的を果たすことが出来ずに空をきった。

「だぁっもうっクソッ!ケーサツ!警察呼んでっ。名誉破損で訴える!!」
「落ち着いて下さい、岸田さん。それに名誉破損ではなく名誉毀損です」
「うわあああんっっ柏田さんのバカアアアアア!!!!」
「ちなみにコレを故意に岸田さんが破壊した場合、掛かった費用すべてを負担することになりますので、取り扱いにはお気をつけ下さい。金額は消費税切捨てで50万です」
「は!?チョコに50万!?」
「はい、50万です」
「…俺、極貧なんだけれども。てか、そうじゃなくても払える金額じゃないんだけれども」
「ええ、ですからお気をつけ下さいとご忠告致しました」
「…神田、50万貸し…」
「オレたちぃ、いまから焼肉食べにいく予定だったんだ〜。ごっめんねぇーりいっちゃん。サラバーイッ」
「ちょっ待て!待って神田さまぁあああっっ」

すがるこちらの声は完璧無視でピシャリと襖が閉ざされる。神田に引き摺られ高梨と柏田さんまで一緒に出て行ってしまった。無情すぎる仕打ちに膝を折って畳へと崩れ落ちる。

ガッテム!!!!

ダンッと畳を思いきり腹立ちまぎれに叩きつけた。と、その途端グラリと揺れた俺チョコが止める間もなく倒れ込み…。

「あ…」

緻密なまでに作られていた俺チョコの小指がポキッと折れちゃいました。
…折れちゃった。
マジで?え?マジで50万…。

「ああああああああああああああああああ!!!!!うわっ!50万!うそっ!えええっ!50万っ!!!」
「払えなんて言いませんよ」

あまりのことにパニックを起こしてしまった庶民脳に、浅北さんが仏のような言葉を告げて下さいました。これに縋らずしてなにに縋る。

「嘘!マジで!?さすがは浅北さんっ!もーっ今度から俺は神に祈るのをやめて、浅北さんに祈りを捧げることにするよ!」
「その代わり、食べて下さいね?」

紳士的スマイルでずいっと押し出されたものに、俺の顔が思いきり引き攣った。
等身大の俺チョコ。

ありえない。

「…ムリです。なにが悲しくて、自分とそっくりなもんを食わなきゃいけないんですかね。絶対やだ」


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