キリリク | ナノ


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9月7日。火曜日。
ようやく縁さんの休暇が終わりました。死ぬかと思った一週間もやっと、やっと終わったのです!これを喜ばずしてなにを喜べというのでしょう。
今夜には私も愛しのNewベッドに潜り込めるはず。完徹二日目ですが、なんとも晴れやかな心地。いまならスキップに華麗なターンまで決めてしまえそうですよ。それほどまでに私は上機嫌だったのです。
心配していた岸田も縁さんの読みが当たっていたのか、今朝起きると元のサイズに戻っておられたようですし、さあこれで憂い事などありません。
瑣末な問題は多々ありますが、そんなものは今日一日くらい見て見ぬ振りしても良い程度です。

「柏田さん、色々とすみませんでした」

ペコリと頭を下げる岸田に、寛大な心の私は鷹揚に笑いかけて差し上げますとも。とりあえず一番詫びて欲しい相手は、悪びれもなくしれっとされておられますが。まぁそれも寛大な心で以下略。

「では本日から縁さんには業務にお戻り頂いて、さっそくですが引き延ばしておりました川本氏との…」
「せっかく利一さんが元に戻られたんですから、少しは気を利かせて貰いたいですね。というわけで柏田、ハウス」
「は!?」

ハウス!?なんですかそれ!私にいますぐ帰れというご命令なのですかっ。
いいえっそうはいきません。今日という今日は川本氏との対談に応じて頂かなくては、私としても引き下がれませんからね!

「休暇は本日までのお約束です」

我儘ぶっこいてないで大人しく仕事しろよ暴君コノヤロー、とはさすがに続けられません。ええ、私も身の危険察知能力は人並み優れておりますので。ですが、ささやかながら咎めを込めて縁さんを睨んでやりますとも。これ以上折れてなんて差し上げません。

「俺はいいから、仕事戻ってよ」

ナイス岸田利一。
その調子でガツーンと縁さんを諌めてやって下さい。さあ!遠慮なく、さあ!

「利一さんは俺と一緒にいたくないんですか?」
「そんなわけないじゃんっ。でも…」

あれ?一気に雲行きが怪しくなってきましたよ。

「これ以上、柏田さんに迷惑かけるのは申し訳ないし…そりゃ俺だってせっかく元に戻れたから、浅北さんともう少し一緒にいたいと思うけど…」

…嫌な予感がします。しかも確実に的中しそうな感じ。

「柏田」
「…はい」
「たしかもう一週間ほど、休暇がとれる余裕はあったよな?」

あるわけないでしょう!!
色々ともうギリギリな状況ですよ!あと一週間とか本気で私が死んでしまいますって!!

「あったよな?」
「………………」
「柏田」
「…はい」

柏田庸司、涙目です。
やっとの思いで乗り切った一週間だったというのに、まださらに一週間とは。
鬼畜ドSっぷりにもほどがあります。なんなんですかこのブラック会社。いや、極道なのでブラックの名はある意味正解…いやいや、そうじゃなくて。

嗚呼…私、柏田庸司。
新しいふかふかベッドで安らかに眠れる日がくるのは、いったい、いつになるのでしょうか。
縁さんを呪うとあとが怖そうですので、ここはもう神を呪うしかありません。
ジーザスクライストこんちきしょうめっ。



END




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