キリリク | ナノ


▼ 4

「……抜け、よっ…」
「抜いたら準備出来ないだろ」
「いれんなっ…」
「無理。俺も限界」

玩具を動かす手は止めず、入り口を広げながら二本、三本と狭い穴の内に挿し入れ、大きさに慣らしていく。だいぶ馴染んできたところで指を抜くと、ホールで与えられる前への刺激にぐったりとしかけた体を反転させた。
うつ伏せにさせ尻を突き上げる格好をとらせると、後ろからほぐした場所に自身の雄の先端を飲ませる。

「ひっ…ぁ…」

引き攣ったように高く上がる声に、宥めるよう止めていた前への刺激を再開させる。もたらされた快感に力が抜けたところを狙って奥へと腰を進めた。
最初のときよりは幾分か楽にすべてを受け入れた後孔に、ローションの滑りを借りてゆっくりと内を擦るように腰を動かす。
女のそこよりも狭くて熱い佐野の内に律動する度、快感を煽られ、より深く繋がるように細い腰を片手で引き寄せる。カリで秘められたしこりを引っ掻いてやれば、一際甘い声が漏れた。

「…八嶋…っ…」
「佐野先生、気持ちいいの?」
「あ…ッ、もう…っで、る…」
「早いなぁ…」

そう言って笑いながらも、締めつけてくる結合部に裏筋を刺激され余裕がないのはこちらも同じだった。それでも相手より先にはという男の意地というものもあって、追い立てるようピストンを早め、オナホールの奥へ佐野のそれが届くよう誘い込み、何度も深い挿入を繰り返す。
前後への攻めたてに堪えきれず薄い肩が力が入ったよう竦むと、内の締めつけがいっそう絞るかにきつくなり、射精感に膨れた雄を最後の足掻きとばかりに深々と突き込んだ。一気に引き抜き、白濁を肌の露出した腰から尻へと吐き出す。



「………さ〜のせんせー」
「……………」
「なぁ、佐野先生って」
「……………」
「オナホール気持ちよかった?……あだっ!!」

乱れた衣服をなおしている佐野に、怒られると承知でニヤニヤと笑いながら問いかければ、ティッシュ箱が投げつけられた。ちょうど角のところが額にクリーンヒットし、紙の箱といえど結構痛い。
赤くなっていそうなそこを手のひらで撫で、胡坐をかいた足に落ちてきた箱を受け止めて溜息をつく。

「そんな怒るなよ」
「俺はあんたに使えって言ったんだ。誰が俺に使えって言ったよ」

やっと言葉が返ってはきたものの、振り返る目が極寒地獄さながらに冷たい。完璧にご立腹モードのご様子だ。

「目の前におまえがいんのに、なんでそんなもんに突っ込まなきゃなんねえの」
「女とヤリたいんだろ?」
「…誤解だってのに」

やっぱり根にもっていたのか。
今度会ったらもう一発くらい殴ってやろうと野田の男前なゴリラ顔を思い出し、舌打ちたいのをグッと堪える。
よっこいしょと年寄り臭い掛け声を上げながら立ち上がると、離れた位置にいた佐野に歩み寄った。近づけば威嚇するように睨まれるも、気にせず引き寄せる。

「離せよ」

言いながらも自分からは振り払おうとはしない相手に安堵しつつ、肩に額を押し当てた。
猫が飼い主の足に額を擦りつけるように、佐野の肩にグリグリと押しつける。

「あんなのただの軽口だろうが。そりゃ美人女医に秘書は好きだけどよ。佐野先生と女医秘書選べって言われりゃ、迷わずおまえを選ぶよ、俺は」
「…………」
「これだけ惚れさせといて、まだわかんねーの?」
「……離せよ」

頑なに拒絶の言葉を吐かれ、これ以上は無理かと仕方なく腕を解いた。
相当今回は腹を立てているのだろうか。
冷ややかな視線とぶつかるのを覚悟で目を相手の顔に向ける。

「……っ」

唇にぶつかる柔らかい感触。押し当てるだけの数秒のキス。

「ギュウギュウ抱きつかれたんじゃ、キスもできねえだろ」

にこりともせず告げられ目を瞠れば、その顔がおもしろかったのか、小さく佐野が笑った。
切れ長の涼しげな目が、このときばかりは優しく細められる。

「あんた、ほんと俺のこと好きだよな」

断定する言葉のなかに、確かめるような響きを感じて口角が笑みに緩んだ。
強気なのか弱気なのか、複雑で扱い難い。行動の読めない気まぐれな甘え下手で、それでいて甘え上手な猫のような恋人。

「おまえも俺のこと好きだろ?」

問い掛けるも返事など期待せず、その唇を今度はこちらから塞いでやった。
意地っ張りな唇をキスで塞げば、素直なその腕が俺の背中に回るんだろう?



− END −





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