キリリク | ナノ


▼ 3


大きく見開いた切れ長の目に戸惑いが浮かんでいるのが見て取れたが、ここでやめてやる気はさらさらない。緩んでいたネクタイを解くとシャツのボタンを外し、傷も痣もないしっとりとした肌に唇を寄せる。
わき腹にキスを落とすと、ようやく正気に返ったようで逃げようと身じろぐ体を体重をかけて押さえつけ、そのまま胸へと唇を這わせた。
平らな胸にプックリと立った突起の周りに吸いつくような口づけをすれば、腹筋のあたりが小さく震える。その反応に口元を緩ませ、さらに中心の尖りに唇を押し当て甘噛んだ。

「っ…や、めろ…って…」

息を呑む音。押し殺した声で嫌がる相手にいつもなら引き際と中断する行為も、今日は聞いてやる気はない。
胸元に顔を埋めつつ、片手でベルトとボタンを外してファスナーを下げる。グレーのボクサーのなかで、まだ芯をもたない佐野の雄を取り出すと、柔らかいそれを手で包むようにして掴み、上下に手のひらで擦り上げた。
押し返そうと肩に掛けられていた手から力が抜け、快感に流されかけているのかチラリと相手の顔を見れば、普段は冷えた目の内が、熱に浮かされるように潤み虚ろに揺らいでいる。

「…っ…や、っ…ぁ…」

喉で塞き止めようとしているのか、掠れた甘さに日中の抑揚のない声を思い出し、そのギャップにジンと下肢が疼く。
こんな声を出させているのも、こんな顔をさせているのも自分なのだと思うと嬉しくて仕方がない。澄ました顔しか見たことのない奴らには、佐野のこんな姿なんて想像もつかないだろう。想像する奴がいたら、それはそれでおもしろくないが。

「見せんなよ」
「…に、をだよ…っ?」
「こんな姿」
「…っ…見せる、わけ…ねえだろっ…」

ふざけんなとばかりに膝で横腹を蹴られた。普段なら相当に痛いだろう蹴りも、こんな脱力しきった力ではちょっとばかり強めに押された程度でしかない。
それでも大げさに痛い、とぼやいて仕返しとばかりに鼻先に噛みついてやった。

「…ちんたらやっ、てんじゃ…ねえよ…下手くそっ」

焦らすように強い刺激を避けての愛撫に、イクにイケずもどかしさから悪態をつく相手を見下ろし意地悪く笑う。
もう少し強く扱かれたほうが感じることを知っていながら、わざとゆっくり手を動かしているのはわざとだ。

「俺の手でイクより、もっといいもんがあるだろ?」
「……な、に…?」
「大事に使ってやるって言っただろうが」

透明とピンクの二層構造になっている筒状の物をパッケージから取り出し、佐野の目の前に掲げてやる。自分の買ってきたものを目にし、こちらの意図に気づいたのか佐野の顔から血の気が引いた。元々不健康そうな顔色がさらに青くなる。

「ふざけんなっ!」
「入れられるだけじゃ、つまんねーだろ?」

一緒に入っていたローションを、すっかり上を向いて反り返った佐野の雄に塗すように垂らす。冷たい液体状のそれに刺激されたのかビクビクと震える雄に、制止も聞かず女のアソコの形を模したオナホールの挿入口をあてがった。
逃げようとする腰を掴んで押しとどめ、一気にふにゃふにゃとした素材のホールのなかへ先端から突き刺すように挿し入れる。
ぐちゅりと濡れた音がし、ローションで滑りのよくなったソコは難なく佐野の雄を受け入れ飲み込んだ。
抵抗も許されず自分自身を玩具に突っ込まれ、羞恥と怒りから佐野の青かった顔色が見る間に赤くなっていく。

「ッ!……マジ、殺すっ…」

物騒な言葉にも聞こえない振りで手を止めず、本来なら自分一人で動かすのであろう自慰の玩具を、まるで女が自分で動いているかのように上下に揺らしてやる。
偽物の膣に擦られ締めつけられ、低く呻き堪えるように息を呑む様がなんともいえず扇情的だ。

「女に突っ込んでるみたいだろ?」

からかい口調で口にするセリフにも、玩具でイカされることだけは避けたいのか、堪えて唇を引き結び反論する余裕もないようで。残っていたローションを片手にたっぷりと出し、濡らした指をまだ硬く閉じている後ろへ差し入れた。
ビクリと佐野の体が震えるのも気にせず、指一本を窄まりから奥へと飲み込ませ、なかをほぐすように掻き混ぜる。


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