Y&Sシリーズ | ナノ


▼ 28

「残り物には福があるってのは本当だな。王様、俺!」

黒い丸のついた割り箸を掲げ、野田が立ち上がる。お前かよ!やら、イカサマだ!などと野次が飛び交うなか、得意げに笑った野田が少し考える素振りを見せたあと。

「2番と5番、自分らのチンコ見比べてどっちが大きいか報告っ」

やっぱりきたか、シモ系。誰のが誰よりデカかろうが別に興味はない。
自分に当たっていないことを願いつつ、割り箸の先を見る。3という数字が見えてほっとした。

「2番、俺だわ」

八嶋がどうにでもなれといった投げやりな顔で割り箸を振る。5番を引いたのは、八嶋とそう体格の代わらない佐々木だ。口々にどちらがデカいか予想し出した野田たちに、佐野先生は?と話を向けられ、どうでもいいとは答えられず、適当に佐々木の名前を出した。
八嶋と佐々木がみんなに背を向け互いに自分の股間を見せ合ったあと、なにやら小声で話し合い、そのあと八嶋が小さく手を上げてヒラヒラと左右に振った。

「俺の勝ち」

サイズで負けた佐々木は目に見えて肩を落として落胆している。男のプライドに関わる問題だが、憐れみよりも馬鹿馬鹿しい。
そんな調子で次から次へとゲームが進められ、初体験の恥ずかしい暴露話やら、泡盛、日本酒チャンポン一気やら、お膝抱っこ10分間など質の悪い命令が飛び交い、

「王様、佐々木ぃいい!4番が2番にチュー。口以外は認めません!」

佐野は1番だ。まだ泡盛一気に当たったくらいで、あとは上手く逃れている。

「2番、俺じゃん!佐々木ぃいっ、おまえさっきの仕返しだろっ」
「知りませんよー。運が悪かったと思って腹括って下さい、野田先生」
「あぁーっせめてまだ綺麗どころきて!頼むから!」
「悪いな野田。4番、俺」

他人事だと思ってワンカップをちびちびと舐めていたが、その声を聞くなりカップを持つ手に力がこもった。
八嶋が4番?
八嶋を見ると、早く早くと野次を飛ばす周りに調子よく応えながら、嫌がる野田を捕まえ、

「佐々木先生の男のプライドを傷つけた報いだと思って、観念しな」

嫌がっている様子もない。ゲームのノリだとわかってはいても、イライラとした気分がおさまらず、食い入るように二人の命令執行を見ている男たちごと視界から外した。
おぉおおっというどよめきが起こり、品のない笑い声が上がる。

「八嶋ったら、テクニシャンなんだから…」
「当たり前だろ。経験値の差だな、童貞にゃ刺激がきつかったか」
「誰が童貞!違うっつの!あーっもう、次だ!次やんぞっ」

次々と割り箸が引かれ、佐野にも回ってくる。なんともいえない複雑な気分で割り箸を引くも、これ以上ゲームを続けたくなかった。
これが終わったら嘘でも潰れた振りをして寝てしまおうと、手に持っていたワンカップの中身を全部飲み干し、野田が飲みかけたままおいてあった泡盛を呷る。
強いアルコールが一気に入ったせいで、頭の芯がぼうっとしてきた。

「佐野先生、もしかして1番ですか?」

隣に座っていた佐々木に割り箸を覗き込まれ、顔を上げると周りの視線が自分に集まっている。酔いがまわって意識が逸れていたらしく、命令されたのを聞き逃したようだ。
番号を見ると1と書かれている。

「あ、俺です」

ざわりと周りがざわめき、嬉々として野田が佐野の体を後ろから羽交い絞めた。突然の仕打ちに野田を振りほどこうとするも、酔いのせいでうまく力が入らず、大した抵抗にもならない。

「よしっ、捕獲成功!やれ八嶋!!」
「ちょっと、離して下さい。いったいなんなんですか」
「んー?命令聞いてなかったのかよー。いまから、1番の佐野に、3番の八嶋がチューすんの。佐野、本気で逃げそうだから俺、押さえ役ね」

八嶋とキス?
酒のせいで熱かった顔から野田の言葉を聞いた瞬間、さっと血の気が引いた。八嶋を見ると囃したてる同僚らのなか、あからさまに困った顔でこちらを見ている。


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