※映画(STAMPEDE)ネタあり


高級ホテルのスイートルームへと足を踏み入れる。
部屋を借りている主である彼は、スイートルームに相応しい高級感溢れるソファーに座り、いつもの様に葉巻を吸っていた。
彼と知り合ったのは彼がまだアラバスタにいた頃だった。行動を共にするようになったのは彼がインペルダウンを脱獄した後だ。それから暫くが経つ。
全ての始まりは、至って普通で彼が情報屋をしている私のところに情報を買いに来たからだ。
といっても、それが始まりの客なんて沢山いる。その沢山いる客全員と情報を売った後も長く行動を共にするかと言われれば答えはノーである。
こちらは売る側、相手は買う側。それ以上でもそれ以下でもない。それ以上に関わることはない。
こうして行動を共にすることになった客は彼が初めてだった。
彼が座っている向かい側のソファーへと座る。頼まれていた海賊万博についての情報をまとめた紙をソファーとソファーの間にあるテーブルの上へと置いた。

「はい、集めてきましたよー」
「確かだろうな?」
「勿論。誰が情報収集したと思ってるんですか?私ですよ?保証します」

彼はテーブルの上に置かれた紙を手に取るとそれに目を落とした。

「そこにも書いてありますけど、まず驚きなのが今回なんと海賊王の宝が登場するらしいんですよ」
「ほう」
「更に更に驚きなんですけど、どうやら裏に絡んでいる大物がいるようで……知ってます?ダグラス・バレットっていう海賊王の船に……」
「ああ、よく知ってる」
「えっクロコダイルさんお知り合いなんですか?」
「……昔、少しな」

途端に悪そうな笑みを浮かべる。けれど、それはどこか楽しそうにも見えた。
何か因縁めいたものでもあるのだろうか?今度少し探ってみようかと思った。

「あっあと、これもサービスでつけときますね。海賊万博が開かれる島の内部の地図です」
「流石だ」
「でしょう?えへへー、もっと褒めてください」
「……」

無視された。
少しは、褒めてくれてもいいはずだ。私がその地図を入手するのにどれだけの労力を払ったと思っているのか、時間をかけて懇切丁寧に説明をしてやりたい。
まあ、それは今度にするとして、海賊万博について情報を集めてこいと私に依頼をしたのだから彼もそこに行くつもりとみて間違いはないだろう。
勿論、私も同行するつもりだ。これだけの規模のお祭りが催されるということは沢山の情報も集まるということ。情報屋として行かないという選択肢はない。

「ところでクロコダイルさん、確認ですけど海賊万博に行きますよね?」
「ああ」
「よかった。私も情報集めに行きたいんですけど、いっぱい海賊来るじゃないですか?危ないじゃないですか?私弱いじゃないですか?」
「何だ、弱ェ自覚はあったのか」
「そういうとこだけ反応するのやめてもらえます!?」
「……」
「もー今度はスルーですか。いいですけどね!で、お願いなんですけど、私のこと守ってくださいね!」
「……」
「えっまたスルーですか!?」

苦労して情報を仕入れてきた私に対してその態度はいかがなものかと思う。
危ないことをするつもりはないが、もしもということもある。その時にちょっとくらい守ってくれてもいいではないだろうか。

「酷い!」

私が渡した情報が書いてある紙に目を落としたまま彼は舌打ちを漏らした。

「そんなに危ない目に遭いたくなけりゃおれの目の届く範囲にいることだな」

そう言って、紙をテーブルに置き葉巻を手に持つと口から紫煙を吐き出した。
私はそれに満足そうに返事をする。これで安全は保証された。
さて、間近に控えた海賊万博には一体どんな情報が転がっているのだろうか。そう思うと、いまから楽しみになってきた。


2019/08/11
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -