名前にほぼ無理やりにクロコダイルが連れて来られたのは高級レストランだった。
中に入れば、窓際の席に通される。そこは高台にあるこのレストランから街中を見渡せる一番景色のいい席だった。
時刻は夕暮れを過ぎた辺り。街中に街灯のオレンジ色の明かりが灯り始めている。空は遠くの方はまだ淡い青色が残っているが大分部分は夜の色に覆われてきていた。そのコントラストが美しい。このレストランで、一番いい席だというのはどうやら本当のようだ。
向かい合うようにクロコダイルと名前が席に着けば料理が運ばれてくる。グラスにはワインが注がれた。
いいレストランだとは思うが、何故名前に有無を言わさずに連れて来られたのかクロコダイルには心当たりがない。
運ばれてくる料理を見てもクロコダイルが好みそうな物ばかりだ。名前がそういう注文をしたのだろうが、まるでクロコダイルの機嫌を取るようなそれらに何か裏があるのだろうかと訝しんでしまう。

「名前、お前……何かやらかしたんじゃねェだろうな?」
「え?何もしてませんよ」
「なら、こりゃあ何のつもりだ?」
「何のつもりって……だって今日はクロコダイルさんの誕生日じゃないですか!」

名前の返答にクロコダイルはすっかりと自分の誕生日を忘れていたことに気がついた。
そういえば、名前を側に置くようになってから毎年律儀にクロコダイルの誕生日を祝ってくる。自分自身ですら覚えていないというのに、
名前はよく毎年忘れずにいられるものだ。それも毎年違ったかたちで祝ってくる。

「ささ、クロコダイルさんグラス持ってください」

名前に促されるままグラスを持つと、名前は自身のグラスをクロコダイルのグラスに合わせた。キン、と小気味良い音が響く。

「お誕生日おめでとうございまーす!」

クロコダイルは、向かいの席でにこにこと笑みを浮かべている名前と自身の好物が並べられた料理を前に無意識に自然と口角が上がる。

「気に入ってもらえたみたいでよかったです」

名前にそう言われて、クロコダイルは自分がそんな表情をしていたことに少し驚いた。


2022/09/05
タイトルは伊語で誕生おめでとうという意味です。
Auguriには成功や幸運を願うグッドラックという意味が含まれるらしいです。いいですね。
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -