※本誌1058話のネタです。コミックス派はご注意願います。





クロコダイルがひととおり千両道化のバギーへの怒りを発散させ終わった後、名前は行動を移そうとしていた。
カライバライ島、せっかく来ているのだから色々と見て回りその過程で情報収集も出来そうだ。好奇心も大きいが、名前の情報屋としての性が名前を情報収集に駆り立てる。
ざっと見る限り情報の隠蔽には長けていなさそうである。というより、何の情報に隠蔽が必要かの判断が出来ていないように見える。こんなに無防備に情報が転がっていそうなところはなかなかないと名前の口角が自然と上がる。
さて、どこから見て回ろうかと一歩踏み出した瞬間、名前は背後から首根っこを掴まれた。

「ぐえっ」

名前から蛙が潰れたような声が漏れる。
背後を見るまでもなく名前には誰に首根っこを掴まれたのは分かっている。分かってはいるが、確認せずにはいられなかった。
顔を後ろに向ければやはり予想どおりにクロコダイルがいた。

「クロコダイルさん!いきなり何するんですか!?」
「お前はどこに行く気だ?」
「え、どこって……情報収集ですけど?」

素直に目的を告げると、クロコダイルは溜息を漏らした。
名前の首根っこから手を離す気配はない。

「ここにはインペルダウンに入れられるような奴らがいるのは分かってるな?」
「知ってますよ。というか、インペルダウンに入ってたのはクロコダイルさんも同じじゃないですかー」

クロコダイルが無言で名前を睨むと、何かを言いたそうではあるが名前は言葉を飲み込んだ。

「今までお前がふらついて面倒ごとに巻き込まれなかったことがあるのか?」
「うっ……それは……」
「分かったら一人でうろちょろすんじゃねェ」
「はい……」

名前が肯定するとクロコダイルはようやく名前の首根っこから手を離した。
クロコダイルに言われたことに名前はぐうの音も出ない。面倒ごとに巻き込まれてクロコダイルに助けてもらったことは多々あるからだ。

「分かりました、一人にはなりません。ですので、クロコダイルさんの側にいることにしますね」

言ってみたものの大抵こういう時は無視されることが多いため、名前は今回もそうだろうと予想をする。

「あァ、そうしろ」

しかし、クロコダイルから返ってきた言葉は予想と違うもので名前は驚いた。
名前よりだいぶ身長が高いクロコダイルをまじまじと見上げてみるが特に変わった様子はない。
クロコダイルに肯定された言葉と今までのやり取りを思い返して、身を案じられていることが分からないほど名前は鈍くはない。
素直に心配だから一人で出歩くな、と言わないところが彼らしいとすら思ってしまう。
今この場で情報収集に行けないことは残念だが、クロコダイルにそういう心配をされているのは素直に嬉しいと感じる。
名前は緩みそうになる頬を堪えようとするが、それが上手く我慢出来ていたかの自信はなかった。


2022/09/04
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