※本誌1058話のネタです。コミックス派はご注意願います。





名前は、別件の依頼だとクロコダイルに伝えられた。
現在名前はクロコダイルからいくつかの依頼を受けている。話を聞けば、それよりも優先度は高いという。現在の鷹の目の所在地、連絡先等を調べろとのことだった。
鷹の目のことは勿論知っている。知っているが、情報屋として顔が広い名前でも会ったことがない人物はいる。鷹の目はそれに当たる。関わったことがないからといって依頼をこなせないわけではない。名前は本人曰く優秀な情報屋である。見合った報酬さえ支払ってもらえれば依頼主が要望した情報を売るのが名前だ。
そして、クロコダイルは名前が要求した報酬を踏み倒したことはない。

「期限はいつまでですか?」
「今日中には可能か?」

現在の時刻は昼を過ぎた辺りである。
名前は少しだけ考える素振りを見せると口を開いた。

「余裕ですね。クロコダイルさんはゆっくり本でも読んで待っててください」

それでは、名前は自分用にと借りている部屋に戻ろうとクロコダイルへと背を向ける。

「名前」

が、クロコダイルに名前を呼ばれ足を止める。
更に追加の依頼でもあるのだろうか、と思いながら再びクロコダイルの方へと向き直るがそうではないらしい。

「おれが何をしようとしているか分かるか?」

こちらを伺うように聞いてくるクロコダイルに、名前の頭の中でどういった返答をすべきかいくつかのパターンが瞬時に浮かぶ。
おそらくこれは下手に誤魔化さずに素直に答えた方がいいだろうと名前は予想した。

「今までクロコダイルさんが私に依頼した内容から察することは出来ます」
「そうか」

クロコダイルは咥えていた葉巻を手に取ると満足そうに紫煙を吐き出した。どうやら名前の回答はクロコダイルの期待したそれに適っていたようだ。

「えーっと……クロコダイルさん、何故そのような質問を?」
「察しの悪ィ馬鹿ならそれまでだと思ったが、いらねェ心配だったようだな」
「いつも優秀な情報屋だって言ってるのに今更じゃないですかー!?」
「……」
「あっまたそうやって無視するんですね!」
「名前」
「はい」
「察しがつくなら分かってるだろうが、まだまだお前には働いてもらう予定だ」
「いいですけど、クロコダイルさんってば人使いが荒いですね」
「優秀な情報屋には可能だろう?」

名前自身が優秀な情報屋だと口にした時は先のやり取りのように無視をするくせに、こういう時だけそれを使ってくるのはずるいと思う。それを言えば名前が調子に乗ることを分かっているのだ。

「もっちろんですよ!それでは、鷹の目の依頼調べてきますねー」

再びクロコダイルへと背を向け部屋を後にしようとするが、ドアノブに手をかけようとしたところで名前の動きが止まる。
思い出したようにクロコダイルへと振り返ると名前は彼の名前を呼ぶ。その声は弾むように軽い。

「クロコダイルさん」
「何だ」
「なんだか楽しくなってきましたね!」

名前のその言葉を聞き、クロコダイルは愉しそうな笑みを浮かべてみせた。

この日から何日かした後、クロコダイルはカライバリ島で千両道化のバギーに激怒することになる。


2022/08/30
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