※映画(STAMPEDE)ネタあり


海軍に包囲されていた中、混乱に紛れなんとか無事にデルタ島から離脱することが出来た。
先程までの喧騒が嘘の様に静かだ。脱出用の船の中、ほっと一息を落としたいところだが明らかに機嫌が悪そうな彼がいる。
目的だった海賊王のお宝が手に入らなかったのだからそれは仕方がないだろう。
どういう経緯があって、お宝を手に入れられなかったのかは教えてくれなかったが残っていた海賊達を見るにきっとまた麦わらが何かしたのだろうと予想はつく。最悪の世代で五番目の皇帝と呼ばれる麦わらの行動を読むのは難しいのだから。
不機嫌さを隠そうともせずに座っている彼へと私は近付く。

「まあまあ、クロコダイルさんそんなに落ち込まないでくださいよ」

私の発言に少し離れたところにいたダズさんはぎょっとした表情をすると甲板へと出て行ってしまった。

「……このおれが落ち込んでる様に見えるか?」
「え?はい」

素直に答えると思いっきり舌打ちをされた。

「また何かチャンスはありますよ。この海は広いんですし?」
「……」
「もー仕方ないですねー。本当は確証を得てからお伝えする予定だったんですが……どうもまた海賊王絡みのお宝の情報を入手しまして……」

一旦言葉を切ると、興味を持ったのか早くしろと視線で続きを促される。

「あ、やっぱり気になります?気になりますよね?」
「チッ……勿体ぶってねェでさっさと言わねェか」
「はーい、実はですね……」

まだ確証は持てていない情報だというのに、先程までの不機嫌そうな表情はどこへやらどことなく嬉しそうな表情に変わっている。

「……というわけで、何度も言いますがまだ確証は持てない情報なんです。なので情報料はいただきません」
「取る気だったのか?」
「そりゃあ……まあ、こっちも商売なので。相手がクロコダイルさんじゃなければ取ってますよ」
「……」
「で、どうします?行ってみますか?噂の出所のゴーストタウンと呼ばれる町へ」
「あァ」

話をしているうちから行くことになるのだろうとは思っていたが、こうもあっさりとは少しだけ驚きである。
まるで、次の悪戯が決まった子供の様な笑みを口元に浮かべている彼を見るのはこれが初めてではない。彼がアラバスタで暗躍していた頃はあまり見たことがなかったが、インペルダウン脱獄後に彼と一緒に行動をするようになってからは度々目にすることがあった。
そして、たまに見せるその表情が少しだけ可愛いと思ってしまう私がいることも紛れもない事実である。


2019/10/12
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