彼女の恋人になってから、初めて彼女の部屋を訪れた時のことである。
高専の頃にも何度か彼女の部屋に入ったことはあったので、今回も予想していたとおりすぎてそこまで驚きはしなかった。
このところ、忙しかったために部屋を片付ける暇がなかった、と彼女は恥ずかしそうな笑みを浮かべながら言い訳を口にするが、高専の頃から彼女の部屋は変わらずこうだったので今更言い訳をしなくてもよく分かっている。
彼女の部屋は、物が多い。床に積み重ねられた漫画本の山、雑誌類、ビニール袋に入ったままのコンビニのお菓子、おそらく出張先で買ってきたと思われる箱菓子、ショップの袋に入れられたままの衣類、小物類、ゲームソフト、テーブルの上に置かれたままになっている化粧品、ゲーム機、ぬいぐるみ等、ぱっと見ただけでとっ散らかっている。

「ええーっと……その……これでもちょっと片付けたというか……」
「名前……分かっていたので大丈夫ですよ」
「えっ!?」
「高専の頃からこうだったでしょう。相変わらずですね」
「えへへへ」
「褒めてません」
「はい……」

がっくりと首を落とす彼女に、思わず溜息を一つ落として再度部屋の中を見渡した。
とっ散らかってはいるが、食べかけのものや使用済みの食器や脱っぱなしの衣類、下着類が放置されているわけではない。そこは安心した。彼女は、単に物の整理整頓が下手クソなだけだ。
放置されている物を然るべきところに片付ければ、とっ散らかった部屋も見栄えよくなるだろう。

「そうですね……まず、本は本棚に」
「はーい」
「で、何故その本棚にお菓子が並んでるんですか?」
「えーっと……可愛いかなって」
「名前」
「はい」
「お菓子は、キッチンの棚へ」
「はい!」

本棚に並べられていたお菓子を取り出し始めた彼女を目にしながら、片付けを手伝うために気合いを入れるべくシャツの袖を捲り上げた。


2020/11/09

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