珍しくぱっちりと目が覚めた。
カーテンの隙間から差し込んできている太陽の光が朝を告げている。
隣にはまだ眠っている彼がいた。いつも私よりも先に起きていることが圧倒的に多いため、この状況は珍しい。
せっかく先に目が覚めたのだから、朝食の準備をして彼が起きてきた時に驚かせようと思い、眠っている彼を起こさないようにゆっくりと上体を起こす。
そのままゆったりとした動きでベッドから出ようとしていると、背後から伸びてきた腕が腹囲へと周りそのまま引き寄せられた。

「わっ……!?」

背中に軽い衝撃。
後ろからがっしりと彼に抱き締められている状態だ。

「お、起きてたの?」
「……今、起きました」

抜け出そうと少しもがいてみたものの、起きたばかりの割には力が強い。というか、離してくれる気配を全く感じない。
彼は、私を抱き枕にするように再び布団の中へ潜っていく。

「ねーナナミン、朝ご飯作るから離してほしいなー」
「珍しいですね。でも、嫌です」
「ええー」
「側にいてください。離したくない……」

私を抱き締めている腕に力がこもった。

「……せっかく休みなんですから、たまにはゆっくりするのもいいでしょう」

やはり離してくれる気は全くないようだ。
珍しくいつもとは逆の立場になっているこの状況に抵抗する気はない。彼の方から甘えてきてくれていることが嬉しくないと言えば嘘になる。

「仕方ないなあー」

わざとらしく言ってみたものの、我ながら声色に嬉しさが滲みすぎではないだろうかと思った。
自分でそう感じるのだから、彼にはばれてしまっているだろう。
頭上で彼が少しだけふっと笑みを漏らす気配がした。
それからすぐに、気持ち良さそうな寝息が聞こえてきた。
彼は、このところ連勤と残業続きだったから疲れていることは知っていた。それもあり、先に目が覚めたので元気が出るような朝食を作ろうとしたのだが、彼に離したくないとはっきり言われてしまえば仕方がない。
こうすることで彼の疲労が癒えるのならいくらでも付き合おうと私も再び目を閉じた。
数時間後、すっかりと眠り込んでしまった私は彼に起こされることになる。


2020/04/16

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