元旦の朝、いつもより早く起床して私はキッチンにいた。
何故なら、餅のためである。お正月といえば餅。餅を食べずにお正月といえようか。いや、いえるはずがない。
だからこうして早起きをして朝食の餅の準備をしている。
フライパンで焼いている餅が膨らんできた頃に彼が起きてきた。

「おはようございます。珍しく早起きですね」
「おはよーナナミン。うん、餅のためにね!」

焼き上がった餅を皿の上に乗せる。

「今年は何餅にするんですか?」

毎年、色々な食べ方に挑戦している。
去年はチョコレートをかけて食べたら、美味しかったがチョコレートが固まらないうちに食べるのが大変だったのを覚えている。

「今年はねえ、生クリームとカスタードクリームに挑戦しまーす」
「……朝からですか?」
「え?うん」
「名前、私のはそれ以外でお願いします」
「生クリームとカスタードクリーム以外だと……きな粉と胡桃と餡子があるけど普通じゃない?」
「普通でいいですよ」

結局、彼は胡桃を選んだ。
私は生クリームとカスタードクリームをたっぷりとトッピングして餅を食べた。
甘いものが大好きな私にはとても満足した味付けで朝から幸せな気持ちに包まれた。
朝食を終えて、二人揃って任務のために駅へと向かう。
これが初詣へ行くためだったのならもっと気分が盛り上がったのだろうが、元旦に任務となると流石に気分は盛り下がる。

「今日ってナナミンと別の任務だよね……一緒がよかったなあー」
「早く終わらせればその分早く会えるでしょう。だからそんなに落ち込まないでください」

自分で思っていたよりも落ち込んでいる風に見えたらしい。
いや、隠していたとしても彼には容易く見抜かれてしまっただろう。

「分かった、早く終わらせる」
「ええ、ぜひそうしてください。夜はゆっくりしましょう」
「うん!」

返事をして、彼の手を掴んだ。
お互いに手袋をしているため手袋越しだが、伝わってくる彼の体温が温かくて安心する。
手を繋いでいられるのは駅に着くまでの残り数分の間になってしまうが、それまではこの温かさを堪能したい。
隣の彼を見て、今年もこうやって彼の隣で過ごしていけますようにと思った。


2020/1/1

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