吐き出した息は白く広がって、青白く照らしてくる月明かりに溶けて消えた。
季節はすっかりと冬になり、夜ともなればきんっと冷え込んだ空気に包まれる。
まん丸とした月が照らしてくる青白い光がより一層冷たさを際立たせている様な気がした。

「寒いねー」

駅から私のマンションまでの帰り道、我慢出来ずにさっきコンビニで買った温かいミルクティーが入ったペットボトルを両手で包む様に持っている彼女はそう言った。

「でも、月が綺麗だね」

黒色の空に浮かぶ煌々とした月へと彼女の視線は向けられる。
月が綺麗ですね、という言葉の意味はあまりに有名であるから彼女も知っているだろうと思う。
そういう意味で彼女が、月が綺麗ですねと言ってきたのかといえば彼女の性格上きっと違うだろう。彼女は、純粋に月が綺麗だからそう口にしたのだ。

「そうですね。……それと、月はずっと綺麗でしたよ」

きょとんとした顔を向けてくる彼女から、きっとこの返しの意味を知らないことが見てとれる。

アナタのことがずっと前から好きでした。

恋人である彼女に改めて伝える言葉ではないのかもしれない。それでも、彼女が口にした月が綺麗だね、に対してふと思いついたのは彼女以外には使う機会がないからだろう。
今はその意味に気付いていなくとも、昔から想いを寄せていた彼女が隣にいて、並んで歩くこの空間がひどく満ち足りたものに感じる。
この瞬間、隣にいるのが彼女でよかったと心から思った。


2019/12/31

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