ソファーに並んで座り、とあるテレビ番組を二人で見ていた。
コマーシャルが流れ始めると隣の彼女は、スマートフォンを弄り始める。最初はつまらなさそうに弄っていたのだが、何か興味がある内容でもあったのか楽しそうな表情を浮かべる。いや、それよりも何か悪戯を思いついた様な表情といった方が正しいのかもしれない。
彼女はすぐに思っていることが表情に出る。本人は、上手くポーカーフェイスが出来ていると思い込んでいるところがある様だが全く出来ていない。以前にポーカーフェイスの練習をしたこともあったが、その甲斐も虚しく全く出来るようにはならなかった。
きっと今も本人は表情に出していないつもりなのだろうが、豊かすぎるほどに表情に出てしまっている。

「ねえナナミン、ハナキリンの花言葉って知ってる?」

スマートフォンから視線を私へと向け訪ねてくる。
彼女は緩みそうになる表情を我慢しようとしているのだろうが、残念なことに全く我慢出来ていない。

「ハナキリン……?いえ、知りませんね。どうしてですか?」
「じゃあ調べてみて」

促されるままに、自分のスマートフォンで検索してみる。
画面に表示されたハナキリンの数種類ある花言葉を見て、彼女の考えていることに察しがついた。

「分かった?」

待ちきれないという風に聞いてくる。

「ええ、独立ですか」
「違う!」
「あってるでしょう」
「えっ……あってるけどそうじゃなくて!」

彼女の言いたいことは分かっているが、ここはわざと惚けたふりをする。

「では、逆境に耐えるの方ですか?」
「そうだけどそうじゃない」
「純愛」
「あってるけど違う」
「自立」
「……ねえナナミンわざとやってるでしょ?」

彼女が待ち望んでいる答えを口にしない私に、流石に彼女にもわざと惚けていることが分かった様だ。

「バレましたか?」
「やっぱり……意地悪。もういいですうー」

そう言って距離を取ろうとした彼女の腰に腕を回して引き寄せる。
少し揶揄いたくなったのは認めるが、彼女の機嫌を損ねさせたかったわけではない。

「名前」
「な、何……?」

素直に引き寄せられた彼女は驚いた様な表情で見上げてくる。
そんな彼女の顎に軽く手を添えると、彼女の唇へ軽くキスを落とした。

「正解は、早くキスして……でしょう?」
「……うん」

消え入りそうな声で返事をした後、ぎゅっと抱きついてきた彼女は唸り声をあげ始めた。時折ずるいという声も混ざっている。

「素直にキスしたいって言えばいいじゃないですか?」
「だって……それじゃあ面白くないかと思って」
「ここで面白さを求める必要はないのでは……」
「えっ!?」

抱きついたままの彼女の肩が跳ね上がる。
反応を見る限り本気で面白さを求めていたのだろう。面白さを追求する場面ではないが、予想外な言動をしてくるのは彼女らしいと思った。
面白い面白くない以前に、彼女から素直に伝えられたら拒否をするという選択肢はこちらにはない。
それを彼女に伝えても、きっとこちらの想像がつかないことをしてくるのだろう。彼女といて退屈したことはない。

「で、でも、たとえ面白くなくてもバリエーションとかあった方が楽しいでしょ?」
「それもそうですね」

よかった、と喜んでいることは声で分かる。
しかし、一向に抱きついたまま離れようとしないため彼女の表情を伺うことが出来ない。

「名前、そろそろ顔を見せてくれませんか?」
「やだ」
「何故?」
「……くっついていたいから」

ぎゅうっと更に抱きついてきた彼女に口元が緩むのを感じる。

「仕方ありませんね」

緩む口元を誤魔化す様に呆れたふりをしてしまう。
そっと彼女の頭を撫でるとシャンプーの甘い香りが鼻腔を擽ってきた。
テレビに視線を移すとコマーシャルは既に終わり、先程見ていたテレビ番組の続きが始まっていた。


2019/12/16

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