出先で見つけたパンダのキーホルダーとパンダ型のクッキーをお土産にパンダの元へと向かう。
連日の任務続きで非常に疲れている私は、久しぶりにパンダのもふもふに癒されたいのだ。早くあのもふもふした毛並みに埋もれたい。
そのためにお土産を購入したわけではないが、いや、そういう下心が全くなかったといえば嘘になる。きっと半分くらいはあった。
高専敷地内を歩いていると、前方に今まさに向かっていた人物の影を見つけた。
遠くからでもよく分かるあの独特のシルエットを間違えるはずがない。
パンダー、と呼びながら私は一気に距離を詰める。私に気付いたパンダが足を止め振り返った。飛びつける距離まで近付くとパンダに思いっきりダイブした。
瞬間、なんだか蛙が踏み潰された様な声が聞こえたが気付かないふりをした。きっと気のせいだ。

「もふもふ〜!」
「おい名前、いきなりびっくりすんだろ」
「ごめんごめん」
「……」
「……」
「……おい」
「んー?」
「いつまでくっついてんだ?」
「だってこのもふもふたまらない……」
「……何か用があって来たんじゃないのか?」

パンダのその一言でお土産を渡しに来たことを思い出した。
名残惜しいがパンダから離れると、手に持っていた紙袋からパンダのキーホルダーが入っている袋を一つ取り出してパンダに差し出す。

「はい、あげる。パンダにお土産を渡しにきたんだった」
「土産?」

パンダは差し出された袋を受け取り、中身を取り出すと首を傾げた。

「パンダだ」
「うん、パンダだよ」
「なあ、名前……パンダにパンダのキーホルダーの土産ってどうなんだ?いや、パンダはパンダじゃねぇけどな」
「じゃあいいじゃん」

続けて紙袋からパンダ型のクッキーが入っている箱を取り出してパンダに差し出した。

「じゃーん、こっちもあるよパンダクッキー!」
「共食いじゃねぇか!」
「パンダはパンダじゃないから共食いじゃないでしょ」
「それもそうだな」

パンダの同級生の分のお土産も中に入っているからと紙袋をパンダに手渡す。それを受け取りながらパンダは口を開いた。

「なあ、土産ってことはどこか遠くに出張行ったんだよな?どこに行って来たんだ?」
「上野」
「都内かよ!」

なんともキレのよいパンダのツッコミが高専敷地内に響き渡った。


2019/10/12

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