※学生時代


ようやく、終わりが見えてきた。
夜中からずうっと戦い続けて、時刻はそろそろ夜が明けるという頃だろうか。
側で同じ様に戦い続けている彼女にも疲労が見て取れるが、自分よりも一年早くこの世界に入った彼女にはそんな状況でも喋る余裕はあるらしい。
といっても、口を開けば出てくるのは食べ物の名前ばかりである。

「いちごパフェが食べたい!」

彼女は同時に、呪霊を一体祓った。
今回の任務は、とある廃墟になっている洋館に巣食っている呪霊を一掃すること。
任務自体は難しいものではない。ただ、事前に聞いていた情報と誤差があった。
いざ洋館に入ってみれば呪霊の数が圧倒的に多い。多すぎた。こんなに数が多いとは聞いていない。
どうやら呪霊の中に、呪霊を増やす能力を持っているものがいるらしくそれを祓うまで呪霊の数は増え続けた。それが増やす呪霊の個々の戦闘力は大したことはないのだが、何せ数が多すぎるため鬱陶しい。
更に厄介なことに、それが増やした呪霊はそれを祓ったところで消えはせずに残り続ける。結果、時間を要する原因になった。
勿論、それらの他にも巣食っていた呪霊の数は多い。何度も言うが、個々の戦闘力は大したことはないが圧倒的な数の差というのは厄介なことこの上ない。
だが、それにも終わりが見えてきたところで冒頭に戻る。
残すはあと二体、こちらも二人。一体ずつ相手をすれば片がつく。
側に立つ彼女へと視線を送れば、彼女にも意図が通じたのか黙って頷いた。それぞれ自分から近い方の呪霊へと一歩踏み出す。
おそらく祓ったタイミングは同時だ。そして、それと同じくして洋館の既にガラスは破れてしまっている窓から朝日が差し込んできた。
夜が明ける。檸檬色の朝日がゆっくりと室内を照らしていく。

「やったー、終わったー!お疲れナナミン」

こちらに駆け寄って来た彼女の姿を見て安堵した。
彼女の呪術師としての腕に不安があったわけではないが、それでもあの数を相手に夜通し戦い続け、お互いボロボロではあるが大した怪我もなく擦り傷程度で済んだのは幸いだ。
いつもと変わらない笑みを浮かべる彼女にほっとして思わず目を細める。

「お疲れ様です」
「お腹減った……朝ご飯食べに行こー!今日の気分は小倉トーストかなー」
「いちごパフェが食べたいんじゃなかったんですか?」
「いちごパフェも食べるよ」
「小倉トーストといちごパフェの食べ合わせってどうなんですか……?」
「えっそれはそれは最高だと私は思う」

うっとりとした表情を浮かべる彼女に、そういえば彼女は甘いものに目がないことを思い出した。

「というか、まず報告が先では?」
「いいのいいの、腹が減っては戦が出来ぬって言うでしょ」
「戦なら終わったばかりじゃないですか」
「あーそっか。じゃあ、腹が減っては身体が甘いものを求めるのですぐに摂取しないと死ぬ」
「は?何ですかそれ……」
「今作った!」
「……」

早く行こう、と洋館の出口へと向かって歩き出した彼女の後へと続く。
先程よりも、洋館内を照らす光が強くなっていた。


2019/08/25
ツイッターのお題で書いたやつなので、タイトルがお洒落なのはそういうことです。

×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -