パンダがまだ小さかった頃から知っている。
正確には、パンダはパンダじゃない。けれど、見た目はパンダだ。どう見てもパンダだ。パンダに見えない人間がいるだろうか。いや、いない。パンダに見える。

「パンダ〜」

久しぶりに会ったパンダに思わず抱きついた。ふわふわとした毛並みがたまらない。癒される。日々の疲れが消えていく感覚がする。これがパンダセラピーというものなんだろうか。パンダすごい。
このまま眠りに落ちれたらきっと幸せだろう。とてもいい夢を見れそうだ。

「寝るな」

頭を叩かれた。
すぱん、と小気味よい音を立てる私の頭にもびっくりだが、力加減というものをしてほしい。お陰で眠気がどこかに吹き飛んでいった。

「いったい!学長、力加減してください!」

元担任で、現学長である私の頭を叩いた張本人に抗議する。
私は、学長に呼ばれたために学長室に来ている。失礼します、とドアを開けて足を踏み入れたら先客でパンダがいた。パンダがいたらどうするか。抱きつくに決まっている。それで、パンダに抱きついていたら学長に頭を叩かれたわけである。叩かれたところが本当に痛い。後で硝子のところに行こうと思った。
パンダが学校に通っているということは、噂には聞いていたがどうやら噂ではなく事実らしい。現在、在学中だそうだ。
つまり、同級生にパンダがいる学年があるということだ。何も知らない人が聞いたら、思わず耳を疑ってしまうだろう。
でも、ここは世間一般にある普通の学校ではない。呪術高等専門学校だ。パンダが学校に通うこともあるかもしれない。なのに私の同級生にはパンダはいなかったことが、とても残念である。

「じゃあ、教室にパンダがいるってことだよね!?」

パンダに未だに抱きついたままの私に呆れながらパンダは言う。

「パンダはパンダじゃないけどな」
「でもいいな〜、私も同級生にパンダ欲しかったなー。楽しそう」
「だから、パンダはパンダじゃないって言ってるだろ」
「教室で毎日パンダに会えるとか羨ましい」
「聞けよ俺の話」

見かねたのだろう学長に、無理やりパンダから引き離される。早く行け、と学長が手で合図をするとパンダは学長室から出て行ってしまった。

「ああ、パンダ〜」
「名字お前は本当に変わらんな……」
「学長、パンダともっかい学生やり直したいんですけどダメですか?」

出来るだけ真剣に言ったのに、即座に却下された。
がっかりしている私に追い打ちをかけるように、仕事の話だ早く座れとソファーを指差された。
わざわざ学長室に呼び出されたその理由に心当たりがないかといえば嘘になる。多分あれだ。間違いない。それしか心当たりがない。この前の任務の時に、壊さなくていい建物を半壊状態まで壊した件についての説教だろう。
その後は、多分普通に難易度が高めな任務の話だろうか。長くなりそうなことに気分が落ちた。パンダにもっと癒されたかった。


2019/05/05

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