いつの間にか、部屋に随分と彼女の物が増えていることに気が付いた。
彼女の忘れ物が多いということもある。漫画本のある巻だけ置きっ放しになっていたり、イヤリングの片方だけ置いていったりとその他にも色々と忘れていった物がある。
他に増えていた物といえば、食器類だろうか。ちょくちょく彼女がペアセットで揃えている。この前もお揃いのマグカップだと言って買ってきた物を鼻歌を歌いながら食器棚へと並べていた。
それが嫌なわけではない。寧ろ楽しそうな彼女を見ているのは微笑ましい。
彼女に合鍵を渡してから暫く経つ。それから半同棲の様な生活になっているのだから、彼女の好きなようにしてくれて構わない。彼女が来るようになってから、この部屋は随分と明るくなった様に感じる。
今日も先程帰ってきたばかりの彼女は、何やら大きめな袋を抱えてきた。何を買ってきたんですか?と聞けば、ニコニコと笑顔を浮かべながら袋に入っていた物を取り出して見せた。

「じゃーん!綺麗でしょ?」

それは、植木鉢に入れられている花だった。見たことはあるが、花の種類には詳しくないので何の花かは知らない。

「ええ、綺麗ですね。何という花なんですか?」
「ペチュニアだよー」

流石に名前くらいは聞いたことがある。ペチュニアとはこういう花だったのかと、彼女が持っているそれをまじまじと見る。

「やっぱ部屋に花があると明るくなるでしょ?」

そう言って、植木鉢を窓辺に持っていくとそこに置いた。日当たりがよいそこに置くのが、植物にはよいのだろう。
部屋に花を置くのは構わない。しかし、彼女は以前にもサボテンを買ってきて枯らせたことがある。サボテンは、あまり水をあげなくていいから世話が楽だから大丈夫だと言っていたが、見事に枯らせてみせた。
サボテンに名前をつけて可愛がっていた様だが、緑色をしていたサボテンが茶色に変色しているのを見た彼女は名前を呼びながら悲しんでいた。

「名前」
「ん?」
「ちゃんと世話出来るんですか?」

まるで、動物を拾ってきた子供に対して言う様な台詞になってしまう。

「うん、大丈夫だよ」
「前もそう言って、サボテンを枯らせたでしょう」
「うっ……で、でも、今度は大丈夫!ちゃんと世話するから!」

サボテンの時も同じ様な台詞を聞いた。
あの時も、一人で世話をすると言うから放っておいた。彼女は最初の頃こそサボテンに話しかけたりたまに水をあげたりしていたが、途中からサボテンは忘れられ、結果としてサボテンは枯れてしまった。
今度は大丈夫だと彼女は言うが、どうにも心配になってしまう。ある程度は、放っておこうと思うが、まあ、たまになら世話をするのも悪くない。とりあえずは様子見というところだろうか。
この時は、何故彼女がペチュニアを買ってきたのかその理由を知らなかった。その理由とペチュニアの花言葉を私が知るのはもう少し後の話になる。


2019/04/20

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