先生とコーヒー1先生とコーヒー2ふわとろオムライスを食べる話と同一夢主です。


分析室に雑賀が戻るとソファーの上で丸まって気持ち良さそうに眠っている名前の姿があった。
声をかけてみるが全く目を覚ます気配がない。思わず盛大にため息を吐いた。無防備にもほどがあるだろう、と。それを本人に伝えたところで、きっと名前はあっけらかんとこういうのだろう。

「私、強いんで大丈夫ですよ!」

知っている。日々トレーニングを積み、執行官になりたての頃よりも腕を上げていることは知っている。槙島に利用されていた頃にも槙島から格闘技を教えてもらったことがあったとも口にしていた。そういう経緯もあり、名前は一般女性と比較して本人が言うように強いということは事実である。
しかし、絶対的な強さなど存在しない。例えば不意をつかれた時などは、普段の力が発揮出来るかといえばそうではないだろう。精神的な影響により十二分に力を発揮出来ないこともある。名前はそれらを理解っていないところがある。自信があるのはいいのだが、自信過剰すぎるところは欠点でもあるだろう。その自信過剰なせいで、何度か危険な目にも遭っている。今まではたまたま軽い怪我程度で済んでいるが、正直見ている側からしたらたまったものではない。非常に心臓に悪い。

「名前」

呼びかけてみるがやはり起きる気配はない。
雑賀は再びため息を漏らすと、着ていた白衣を脱いで名前にかけた。それから、自身のマグカップにコーヒーを淹れる。この部屋には、まるで自分の部屋だとでもいうように頻繁にやって来ては過ごしている名前専用のマグカップもある。ブラックコーヒーが苦手な名前用にミルクと砂糖の用意もある。コーヒーを飲みながら食べるお菓子も少々用意してある。元々はなかったものが、名前が訪れるようになってから着々と増えていっている。
槙島に利用されていた女、槙島の近くにいた名前に最初に興味を示したのは雑賀であるが、最初に会話をした時にまさか後で妙に懐かれるとは予想外だった。何か裏があるのかとも当初は思ったが、名前の言動からそれはないことはすぐに分かった。あるのは名前から雑賀へのまるで隠す気などない真っ直ぐな好意である。
物知りな先生とお話するのが楽しいです、と名前はそう言って日々分析室を訪れては雑賀との会話を楽しんでいる。
かつて講義を受講した者の犯罪係数を上げたことがある雑賀の元に、進んで足を運んで来る人間は少ない。それも、事件関連の話ではなく純粋に会話を目的に訪れる人間は名前くらいだ。そんな名前と過ごす時間を楽しくないといえば嘘になる。日々のそうした時間を少なかず楽しみにしている自覚はある。
今日もまた名前が目を覚ましたら、いつものように会話に花を咲かせるのだろう。名前が眠っている今のうちに、分析官としてすべきことを済ませておこうと雑賀はモニターへと表示させていた資料へと意識を向ける。
その背後で、ソファーの上で名前は雑賀がかけた白衣に包まって気持ち良さそうな寝息を立てていた。


2023/07/05
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