※謎時空です


久しぶりに二人で出かけた先で、少し休憩をしようと近くにあったカフェへと入った。
何を飲もうかとレジ前にあったメニューを目に迷っていた名前が、決まったという風にメニューから店員へと視線を変える。その表情からは、滲み出る嬉しさを隠したいのだろうが漏れ出てしまっている。こういうところばかり見ているウェザーはやはり彼女は詐欺師には向いていないと改めて思う。

「あっすいません、これ……トールサイズのキャラメルモカウィズチョコレートクリームアンドホイップクリームフラペチーノお願いします」

名前の口から出るまるで呪文のような注文にウェザーは思わず真顔になる。
隣にいる彼女の顔をついまじまじと見てしまう。
その視線に気づいた名前がウェザーの方を向いた。

「ウェザーどうかした?」
「……いや、何でもない」
「そう?あっウェザーは何飲むの?決めた?」

名前に聞かれ、はっとするウェザーだがメニューを眺めながら何を飲もうと考えていたのか全て彼女の長い呪文のインパクトで消えてしまっている。

「……」

先ほどの名前の嬉しさを隠せていない表情を見るに、きっと彼女が注文したものはとても美味しいのだろう。

「オレにも同じものをくれ」
「えっ!?」

何故か驚いた声を上げる名前にウェザーは疑問の視線を投げる。

「わ、私と同じの……美味しいけどめちゃくちゃ甘いよ。えっと大丈夫?」
「……そんなにか?」
「うん」

どうしますか?と店員が確認をしてくる。
少し迷ったが、ウェザーは別段甘いものが苦手なわけではない。それに彼女が美味しいと言うのだから興味があった。

「大丈夫だ。同じものにしてくれ」

かしこまりました、と店員が返事をしレジへと打ち込むと金額が表示される。名前が財布を出そうとするのをウェザーがそっと制すると手早く会計を済ませた。
店員に案内されたランプの下で二人が注文したメニューを待っていると、少しして二人分のキャラメルモカウィズチョコレートクリームアンドホイップクリームフラペチーノがトレイに乗って手渡された。
名前はそれを見て、目を輝かせると早くと席へと急いで行く。丁度空いていた席を見つけ、座るとよほど楽しみにしていたのだろうすぐにストローをさして名前はそれを口に含んだ。

「んー美味しい!幸せ……!」

名前の幸せそうな顔を見て、ウェザーは少しだけ柔らかい表情へと変化する。おそらく彼はそういう表情を彼女に向けている自覚はないのだろう。
ウェザーは名前と同じようにストローをさすと一口、口に含み口内に広がる想像していたよりも強烈な甘さに少し驚いた。

「……思ったより、甘いな」


2021/06/21
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