同じ歳の幼馴染がいる。
子供の頃から一緒で、ジムチャレンジのスタートも同時期だった。
おれと同じくらい強くて幼馴染でライバルだと思っていた。きっと最後のジムも制覇してトーナメントでおれと戦うんだろうと思っていた。
しかし、幼馴染はジムチャレンジの途中でバトルよりポケモンと旅をして色々な所を見て回りたいと、ジムチャレンジを辞めてガラル地方を一周した後にカントー地方へと旅立ってしまった。
それから大体一年の単位でガラル地方へと帰ってくる。滞在期間は長くて二週間くらいだ。
その間もガラル地方の色々な場所を駆け巡っているため、顔を合わせる機会は帰ってきたその日くらいしかない。
再びどこかの地方へと旅立つ時に挨拶はない。ある日忽然といなくなって、ある日突然ともうガラルにはいないと連絡がくる。
その連絡も旅先から定期的にくるわけではなく、一年の間に数えるくらいしかない。
そんな幼馴染が今日帰ってくるらしい。珍しく帰ってくる前に連絡があった。そうはいっても、何時にどこに幼馴染が現れるのかは全く分からない。ただ明日帰るとだけ連絡があっただけだ。
ジムチャレンジに来たトレーナーとのバトルが終わり、そのトレーナーが去って行ってすぐのタイミングだった。
聞き慣れた幼馴染の声がジム内へと響き渡る。

「ただいまー!」

声のした方へ視線を向ければ、久しく見る幼馴染とその背後に大きな影が見えた。

「ああ、おかえりなさ……は……?サザンドラ?」

幼馴染の背後にいたのはサザンドラだった。
前回帰ってきた時には連れていなかったはずだ。

「可愛いでしょ?拾っちゃった」
「拾っちゃったって……サザンドラがそこら辺に落ちてるわけねぇでしょ……」
「いやいや、ネズくんホントにサザンドラ落ちてたんだって」

果たして本当にサザンドラが落ちていることがあるのは分からないが、適当に幼馴染の言葉を受け流した。
このまま付き合っていると、だらだらとよく分からない会話に流されていってしまう。
適当に受け流したのが効いたのか、すぐに別の話題へと切り替わる。片手に持っていた紙袋を差し出してきた。

「あっネズくんこれお土産ね!マリィちゃんとどうぞ」

モーモーミルクで作ったお菓子で最近ジョウト地方で人気になっているらしい。

「ありがとうございます。で、今度はどのくらいいるんですか?」

お土産を受け取りながら妙に視線を感じることに気付いた。幼馴染の背後にいるサザンドラを見るとばっちりと目が合った。ものすごく見られている。気にならないかといえば嘘になるがとりあえず無視をした。

「え?明日すぐイッシュに行くよ」
「はぁ?帰ってきた意味あるんですかそれ?」
「あるよ。定期的にネズくんに会いたくなるから意味はある」

こういうことを昔から何の恥らないもなく言ってくれる幼馴染だった。

「じゃあ、もっと長くいればいいじゃねぇですか」
「えー」
「何か急ぎの用でも?」
「ううん、ないよ」

ないと答えるくせに、何を悩んでいるのか首を傾げている。
その間も幼馴染の背後にいるサザンドラはおれのことをじっと見てくる。

「明日ライブするんで見ていってほしいって言っても?」
「それなら残る」
「ちょろいですね」
「うん、ネズくんのお願いだからね」

おれの頼みは聞いてくれるらしい。
それならば、ストレートに一週間くらいゆっくりしていってほしいと言ってみてばよかったと思った。
そして、気になるのは相変わらずおれから視線を外さないサザンドラの存在だ。無視をしていたが、流石にここまでじっと見られているとなると不気味である。

「名前……そのサザンドラですが、何でおれから視線を逸らさねぇんですか?」
「え?そんなにネズくんのこと見てた?」
「ガン見ですよ」

幼馴染は気付いていなかった様だ。
少し考える素ぶりを見せた後、何か思い当たる節があったのかもしかして、と口を開いた。

「ここに来る前に、これから私の大好きな人のところに行くんだよーって言ったから、もしかしてネズくんのことライバル認定しちゃったのかも。この子私のこと大好きだから」
「……何と?」
「え?このサザンドラ私のこと大好きだから」
「そこじゃねぇですよ。もっと前」
「大好きなネズくんのとこに……」
「はい、ストップ」
「へ?」

片手で制する様に止めると不思議そうな顔をしている。

「おれのこと大好きなんですか?」
「うん」
「……」
「あれ?ネズくん知らなかったの?」
「昔からストレートにそういうことを言ってくるとは思ってましたが、誰にでも言ってるものだと……」
「失礼な!ネズくんにしか言わないよ。意外と鈍いよねネズくん」
「うるせぇですよ」
「あはは、そういうとこも大好きー」

嬉しそうに笑って幼馴染はおれに抱き着いてきた。勢いよく抱き着いてきたせいで少しよろけそうになったが、足に力を入れてしっかりと幼馴染を受け取める。
抱き着いている幼馴染の背中に腕を回そうとしたところで、痛いくらいの視線を感じその先を見ると殺気を含んだ様なサザンドラと目が合った。


2019/12/23
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