エンジンシティを後にした少女は順調に勝ち進んでいるようだった。
少女は、注目トレーナーとして騒がれ始めていたので自然と情報は入ってくる。それがなくとも、連絡先を交換したことが嬉しいのか頻繁に少女から連絡がくるため近況を知ることが出来た。
しかし、その連絡はガラル地方の最後のバッジをゲットした途端にぱたりと止まってしまった。
あれほど頻繁にきていた連絡が止まると少しだけ寂しいものがある。
トーナメントに向けて集中したいのだろうと特に気にしていなかったが、ぼくの予想は見事にハズれることになる。
いつものようにポケモン達と第二鉱山で、トレーニングをしていると洞窟内によく聞き覚えのある声が響いた。

「やっぱりカブさんここにいたー!」

少女の大きい声に驚いた野生ポケモンが何体か逃げて行くのが視界の端に映る。

「名前!?」

勿論、ぼくも驚いた。
トーナメントに向けてどこかでトレーニングでもしているのだろうと思っていた少女が今目の前にいるのだから。
こちらの驚きには気にも止めないようで、ニコニコと笑顔を浮かべて近付いて来る。

「もう知ってると思いますけど、バッジが全部揃ったので報告に来ました!」

自慢げに見せてくるそこにはバッジが円形の型の中にぴっちりと嵌って輝いていた。

「どうですか?すごいですか?」

褒めてと言わんばかりに自慢げな表情をしている少女の頭を撫でた。

「ああ、すごいよ」
「えへへへ」

撫でながらはっとする。
つい昔の様に撫でてしまったが、あの頃様な小さな子供ではないのだから頭を撫でるという行為は年頃の少女にするのはどうなのだろうか。
少女の顔をちらりと見てみれば、嬉しそうに笑みを浮かべている。どうやらぼくの心配は不要だったらしい。

「あとですね、お願いがあるんです」
「お願い?」
「トーナメントが始まるまでトレーニングにご一緒したいです」
「……トーナメントで当たるかもしれないよ」
「それでもです。昔みたいにカブさんとトレーニングしたいんです!」

少女の瞳から絶対に譲らないという強い意志を感じる。
こうなったら少女はぼくが何を言っても無駄だろう。こちらが頷くまで諦めない。諦めの悪いところは昔から変わっていない様だ。

「そういうところは変わらないね。仕方ない……」
「いいんですか!?やったー!」

両手を上げて飛び跳ねながら喜びを表す少女を見て、こういうところも昔から変わらないと思った。
明日の朝早くから一緒にトレーニングをする約束をしたところで何となく訪ねてみた。
朝早くからのトレーニングで問題ないというということは、おそらくエンジンシティどこかのホテルを予約をしているのだろう。

「名前、明日の朝早いけど本当に大丈夫かい?泊まるところは?」
「えっと、ワイルドエリアでキャンプするので大丈夫です!」

元気よく返ってきた答えは予想外で再び驚かされた。
少女の実力であればワイルドエリアで一晩を明かしても問題はないのだろう。少女もポケモン達もあの頃とは比較にならないほど強くなっている。
少しだけ泣き虫だった少女は随分とたくましく成長した様だ。


2019/12/3
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