※映画(STAMPEDE)ネタあり


クロコダイルから一通りバレットを倒すための作戦を聞き終えたところで、ローの視界の端に影がちらついた。
物陰に隠れ二人の様子を伺っているようだったが、ふいにそこから飛び出すとローにはよく聞き覚えがありすぎる声を発する。

「船長ー!」

そこには、ニコニコと笑顔を浮かべているローの船のクルーである名前が立っていた。
クルー全員を島から何とか逃したはずであるのに、何故彼女がここにいるのか?確かに、自分も残ると駄々をこねた彼女を無理矢理船に乗せるのには手を焼いたが、あの時確実に船に乗っていたはずである。

「お前……!?何で!?」
「えへ、来ちゃった」
「来ちゃったじゃねェだろ!?」

周囲に、ローの大きな声が響く。
ずかずかと名前に近付くとそこから説教が始まった。何かと問題を起こす彼女に説教をする光景はハートの海賊団では日常茶飯事のことである。
つい先日も、補給に立ち寄った島で喧嘩をふっかけられた彼女はその喧嘩を見事に買った。そこまではまだよかった。問題はそこからだ、喧嘩を売ってきた相手を倒した彼女は更に周囲にいた他の海賊を巻き込み更にまた側を通りがかった海賊を巻き込んで大喧嘩を始めてしまったのだ。
最終的に騒ぎを嗅ぎつけてきた海軍に追いかけられ無駄に体力を消耗するだけとなった。そして、たっぷりとローに説教をされたばかりだというのにまだ懲りていないらしい。

「だって船長のこと心配だったんだもん……」
「人のことよりまず自分の心配をしたらどうだ?大体お前はいつも……」

ぷいっとそっぽを向いた名前を前にローの説教は終わりそうもない。
そこへ彼女の登場からすっかり忘れられてしまっていたクロコダイルが呆れた様に声をかける。

「おいおい……痴話喧嘩ならよそでやれ」
「痴話喧嘩じゃねェ」

クロコダイルの声に反応したのはローだけではない。
彼女は真正面に立っていたローの横からその後方に立っているクロコダイルへひょっこりと顔を覗かせるとにこやかに笑顔を向けた。

「あっどうも初めまして。船長がお世話になってます」
「なってねェよ!」
「まあまあ、船長ちょっと落ち着いてくださいよ」
「誰のせいだ!?」
「あまりイライラしてもいいことありませんよ。あ、甘いものでも食べます?」

名前はポケットから綺麗な包装紙に包まれた飴玉を取り出しローに差し出すが、いらねェと拒否された。
彼女は、残念そうにその飴玉を包装紙から取り出して口へと含む。瞬間、幸せそうな笑みが広がる。

「おい、ところでこいつは戦力になるのか?」

飴玉を幸せそうに口の中で転がしている名前を顎で指しながらクロコダイルはローへと問いかける。
ローが何か言うより先に、名前が勢いよく手を上げる方が早かった。

「なりまーす!覇気使えます!」
「ほう……」
「あっちなみに能力者じゃないのは、もしも万が一船長が溺れた時に助けるためです」
「そんなヘマはしねェ」
「えーこの前、溺れた時助けてあげたじゃないですか!」
「……」
「クハハ、随分と元気なお嬢さんのようだ」

楽しそうな笑みを漏らすクロコダイルとは逆にローは不満そうに思いっきり舌打ちを漏らした。
他のハートの海賊団のクルーがそれを目にはしたら縮み上がりそうなものだが、名前は普段から説教をされ慣れすぎているせいもあってかなんてことはないという顔をしている。
そんな彼女に、ローな少しきつめに釘を刺した。

「おい名前、いいか?絶対に先走るなよ。おれの言うとおりに動け。分かったか?」
「もっちろん!任せて船長!」

返事だけはいい。
びしっと敬礼を決めてくる名前に、ローはどことなく嫌な予感がした。
再び彼女へと念を押すと、やはりいい返事が戻ってきた。
結論を言うと、この時のローの予感は的中することになる。デルタ島から脱出した後、船内でいつもの様に説教をされる彼女が目撃されたとか。


2019/10/20
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