*09


「凛、本当に大丈夫か?もし今日少しでも嫌だと思ったんなら、やめたっていいんだぜ。」

万事屋へ帰宅後、銀さんは相変わらず、私が真選組で働くことを心配しているみたいだった。
そんな心配するほどかな、とは思うが、やはりトシ、と呼ばれていた人が頭をよぎる。

「うーん…、正直どうなるかわからないというのが本音ですけど、でも頑張るしかないので。」

そうだ、私は別にやましい気持ちなんてないし、真選組をどうこうしようだなんて思っていないのだから、仕事を頑張って、トシさんに認めてもらうしかない。

「そうか、まァ何かあったらすぐ言えよ。」

「はい。本当に色々とありがとうございます。」

本当に、ここ数日でこの人にはとてもお世話になっている。あまり良い言い方ではないが、相当お人好しなのだろうと思った。
その分、私自身も、銀さんをはじめ万事屋の皆に少しずつ恩返しをしていきたい、と強く思った。

「そうだ、銀さん。あのトシさんという方は、どんな方なのでしょう?」

そう聞くと、銀さんの顔は一瞬にして青ざめた。

「な、何、凛ちゃん…、もしかして土方くんのこと…?」

銀さんの反応は気になったが、トシさんの苗字が土方、ということを知った。
そういえば総悟くんもそう呼んでいたかもしれない。

「土方さん、という方なんですね。銀さん、何か勘違いをしてませんか…?」

「い、いやいや!?ま、まあ?アイツ顔は整ってると思うし?マヨネーズだけど?そういうこともあっていいとは思うんだけ」

「銀さん!もう、いい加減にしてください!本当に気にしているのに…、土方さんにどうにかして、私のことを信じてほしいんです。」

そう、大きめの声で言うと、応接間で寝ていた定春を起こしてしまった。
ぽけっとした瞳の定春に申し訳なくなり、側に行き、大きな頭を撫でてやる。

「わ、ごめんね定春、起こしちゃったね。よしよし。」

「で、信じてほしいってどういうことだよ?俺ァてっきり凛が土方くんのことを好きになっちまったのかと。」

定春がまたうとうとし始めたので、起こさないように、そっと離れて銀さんと私はソファーに座る。

「今日、真選組で皆さんと話していた時、土方さんはたぶん、いや確実に、私を疑っていました。そりゃあ、初対面ですし、組織柄そうせざるを得ないんでしょうけど、正直怖くて、働く前にどんな人かって少しでも知っておけば、まだ大丈夫かな、と思いまして…。」

そう言った私を、銀さんは少しの間見つめていた。
視線が逸れた、と思ったら銀さんは冷蔵庫に向かい、イチゴ牛乳を自分用と、私にも注いでくれた。

「ま、大丈夫じゃねーの。」

銀さんは、私の目の前にコップを置きながら、それだけ言った。
さっきはあんなに真剣な顔をしていた銀さんだったので、拍子抜けした。

「え、っと、大丈夫、ですかね?」

「おう。」

自信満々にそう返されてしまったら、何も言えなくなってしまった。
正直もやもやする気持ちは残っているが、銀さんはこれ以上話さないつもりなのだろうか。
銀さんをちらっと見ると、目が合ってしまって、何だよ、と言われてしまった。

「いや、その…、さっきは銀さんと土方さん、喧嘩してましたけど、実はお互いのことわかり合ってるのかもしれないな、と思いまして。」

「はァ!?ふざけんなよ!そんなキモいことあってたまるか!」

銀さんの剣幕に驚きつつも、そんなにムキになるってことは、そうなのかもしれないな、と思った。
すごく頼りになるのに、最近、実は子供っぽい銀さんを知りつつあって嬉しく思う。

「ま、鬼だ何だと言われてるが、アイツも人間だ。向こうもお前のことを計りかねてるんじゃねーの。」

銀さんのその言葉を聞いて、ハッと顔を上げる。
俺はもう寝るぜー、と言いながら、寝室へと入ってしまう銀さんにお礼を言うと、右手を挙げて応えてくれた。

銀さんの言う通りだ、と思った。わけのわからない女が急に来て、働かせてほしいだなんて土方さんじゃなくても疑うに決まっている。
やはり仕事ぶりを見て信じてもらえるようにならないといけないな、と確信した。

明後日が初仕事だ、と思い、布団に入った。



13



戻る

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -