*05


「で、何かやりてー仕事とかあんのか?」

「そうですね…、特にこれっていうものはないんですけど…。前は事務関係の仕事をしていました。」

ふ〜ん、と銀さんは興味なさそうに聞いている。
でも、やるんだったらできるだけ時給が良いところがいいし、融通の利くところだと尚良い。
あとは、事務関係じゃなくて、やったことがない仕事とかもいいなあ。具体的に思いつかないけど。
そういえば、前の職場は大丈夫だろうか、リストラされていたらどうしよう。
だんだん不安になってきた。また就職活動なんて嫌だなあ。

「おっ、凛、団子食べてかねェ?」

偶然通りかかった甘味処を指さし、銀さんはそう言った。
お金ないんじゃなかったのかな、まあでも小腹がすいたことだし、食べたい。
はい、行きましょう銀さん、と言って、二人でお団子を頼む。

「せっかく良い天気ですし、外で食べましょう?」

おっいいねェなんて言って、木で作られていて、赤い布を敷かれた甘味処の椅子に腰掛ける。
銀さんは粒あんのお団子、私はみたらし団子だ。
店員さんがお団子と、温かいお茶を持ってきてくれた。お礼を言って受け取ると、銀さんの目が心なしかきらきらしている。

「お団子好きなんですね。」

そう言って笑いかけると、銀さんは、いや、甘い物だな、団子に限らず。パフェとかも大好きだからね銀さん。と言った。
そういえば依頼の話をしたときも、いちご牛乳を飲みながらだったっけこの人。それまではてっきり神楽ちゃんのために冷蔵庫にあるんだと思っていたけど。
和やかな雰囲気で話していると、突然銀さんは真面目な顔になった。
どうしたのだろうか、と思い、話しかけようとすると、銀さんが口を開いた。

「凛、そんなに気ィ張らなくてもいいんだぜ。働き先の話だって無理してやらなくてもいいんだ。そうでなくたって慣れない場所で疲れてるんじゃねェのか?夜だってそんな眠れてるわけじゃねーだろ。万事屋のことばっかり気にしねーでよ、もうちょっと自分のこと大切にしろよな。」

あ、働くことに反対してるわけじゃないんだぜ、と付け足して、銀さんは横目でこちらを見た。
また気を遣わせてしまった、申し訳ないなあ。けど、甘えてしまいたい気もする。

「ま、どうせそんなこと言わせて申し訳ない、とか思ってんだろ。そういうとこだよ、もっと楽に生きろって。隈できてんぞ。」

見破られていた、上に隈ができてるなんて自分でも気づかなかった。
銀さんよく見てるなあ。何でもお見通しだ。あの夜話したときからずっと。
食い終わったしそろそろ行くかー、なんて、ちょっと伸びをしてから、銀さんが立ち上がる。
それに合わせて私も立ち上がり、銀さんに言った。

「…はい。銀さん、たしかにちょっと自分のことを省みていなかったかもしれません。でも、万事屋にいる以上役に立ちたいという気持ちは変わりません。だから仕事探し、もう少しお手伝いしていただけますか?」

「おう、そーだな。もうちょい頑張るかー。」


「旦那、話は聞かせていただきやした。どーです、そこのお方、真選組で働くってェのは。」

そう言って、どこからかひょこっと出てきたのは、黒い服を着た、まだ少し幼さの残る顔立ちの青年だった。
げ、総一郎くん、と銀さんが言っているあたり、二人は知り合いなのだろう。

「旦那、総悟でさァ。で、どうです?真選組で女中として働きたいなんて物好きなやつなかなかいなくてねェ、人手が足りてないんですよ。人助けだと思って、どうですかィ。」

総悟、と名乗る人は私に目を向ける。人助けだと思ってなんて言われてしまうと、ついやらせてください、と言いたくなってしまうが…。というか、しんせんぐみ、新選組?あの有名な?こんな黒い服じゃなかったと思うけど…、どういうことだろう。

「凛、こいつらんとこはやめといた方がいいぜ、ゴリラにマヨラー、こいつだってドSだしよ。ロクな奴いねェよ?」

「しんせんぐみ、って何やってる所なんですか?」

銀さんのいう人たちのことは少し気になったが、それよりもこちらの方が気になった。
何か手がかりがあるかもしれない。

「あり、おねーさん、真選組を知らないんで?真選組は、対テロ用の武装警察でしてねィ。こう聞くとちょっと危ねェかもって思われるかもしれやせんがね、女中やってる分にはほぼ安全でさァ。あっ、自己紹介が遅れやした、真選組一番隊隊長、沖田総悟でさァ。よろしくお願いしやす。」

しんせんぐみ、沖田。知ってるけど、どこか違う…?総司じゃなかったっけ、しかも対テロ用なんて、何だか現代みたい。
怪しまれないよう、どこかモヤモヤする心を押さえつけて、銀さんを見やる。できるなら、ここで働いて、何か手がかりが見いだせたら、と思う。

「銀さんはこいつらのとこなんて絶対おすすめしないけどね!」

私の視線が、銀さんに意見を求めているように見えたようで、そう言われた。
沖田さんは、そんな私たちの様子をじっと見ている。

「銀さん、私、働いてみたいです。」

「…え?凛ちゃん!?俺が言ってたこと聞いてた!?」

「はい、けどやったことのない仕事をやってみたいな、とも思っていたので。あっでも銀さんがそこまで反対するなら考え直しますよ!」

いや、いいんだけど、いいんだけどよォ…、そう言いながらぶつぶつ何か言っている銀さん。沖田さんは、私の返事を聞くなり、腕を掴んできた。

「じゃあ早速屯所行きやしょう、局長にも紹介しなきゃならねェんで。あっ、旦那はどうしやす?別に帰ってもいいですぜィ。俺案内できるんで。」

「いや行くに決まってんだろ!土方くんがいるのは気に食わねェが、さすがに凛を一人で行かせるわけにはいかねーだろ。」

よかった!一人で行くのは少し不安だったから、銀さんが来てくれると聞いて安心した。
沖田さんはチッつまんねーや、と言いながら、屯所へ向かうべく、歩き出した。
舌打ちに関しては聞こえないふりをしよう。


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