*04


早朝、銀さんを起こさないように、そっと和室を出た。
家主である銀さんをずっとソファで寝かせるのは忍びないので、自分がソファで寝る、ということを伝えたら、女にそんなことはさせられない、と言われ、結局布団を並べて和室で寝ることとなったのである。
昨日だってあんなにお金貰っちゃったし、新八くんが来る前に朝ご飯を作ろう、と思い、台所へ向かった。
冷蔵庫を確認すると、卵といちご牛乳しか入っていなかった。

「…、買い物し忘れちゃったのかな?」

昨日の夕飯分で買ったものはすべて使ってしまった。冷蔵庫も確認していなかった。申し訳ないが、昨日新八くんが作ってくれたメニューと同じになってしまいそうだ。味噌汁は具材もないから今朝はないけど。
お米はあったので、とりあえず炊飯器のスイッチを入れる。
卵焼きを焼いて、朝ご飯の準備を進めていると、新八くんの声が聞こえた。

「あ、凛さん。おはようございます。うわあ、朝ご飯ありがとうございます!」

「いえいえ、これくらいしかできないから。新八くん、今日は座って待ってて?」

はい、じゃああの二人起こして待ってますね、と言って、新八くんは二人を起こしにいった。
ちょうどご飯も炊けたみたいなので、朝食を並べる。卵焼きだけだけど。
銀さんも神楽ちゃんも、ぼーっとした寝起きの顔で、ソファに腰掛けている。

「おはようございます、銀さん、神楽ちゃん。新八くんも起こしてくれてありがとう。」

二人はそれにまだ眠そうな返事を返し、皆でいただきますをしてご飯を食べ始めた。

「銀さん、お願いがあるんですけど…。」

そう切り出すと、ちょっと目が覚めたようで、どうした?と聞かれた。
新八くんも神楽ちゃんも、どうしたんだろうか、といった顔でこちらを見ている。

「買い物に、行ってもいいですか?ご飯の材料が全然なくて。」

そう言うと、これお前が作ってくれたのか?なんて言いながら、少し困ったような顔をした。

「はい、さっき作るときに冷蔵庫を見たらもう卵といちご牛乳しかなくて。」

「あーまあ、万事屋はいつもそんなもんだ。」

そう言われて驚いてしまった。こんな育ち盛りの子が二人もいるのに、それで大丈夫なのだろうか。もしかして、食費に回せないくらい、お金がないんだろうか。

「家賃も滞納してますしね…、そろそろ依頼でも入るといいんですけどね。」

新八くんのその言葉に、依頼もあまりないことを察した。そんな所へもう一人、私が転がり込んでしまったのだ。家計は更に圧迫されているだろう。昨日だって、せっかくパチンコで当てたお金を私の日用品代に使わせてしまったのだ。申し訳なさでいっぱいになる。

「そうだったんですね…。あの、もしよかったら、私も働き先を探してみてもいいですか?銀さんに依頼のお願いをしたといっても、ただで住まわせてもらってるようなものですし…。」

「いや、そんなことする必要はねーよ。おめーの働き先はここだろォが。凛との依頼の約束は、凛がここで働くことと、俺が依頼を受けることの交換条件だろ?それ以上何かしてもらっちまったらわりーしよ。」

たしかに銀さんの言う通りだ。けど、万事屋に仕事が入らない限り、私はただの居候になってしまうし、万事屋に仕事が入ったとしても、勝手のわからない私だけが働くわけではないと思う。
私と万事屋の関係だけで考えるならば、万事屋の負担の方が大きいだろう。

「…それでも、万事屋の皆さんの負担の方が大きいと思います。昨日、一昨日と銀さんと話して決めた依頼の約束ですけど、もし他に何か万事屋の助けになれることができるなら、私にやらせてください。今日みたいにご飯作るとか、他のところで働くとか何でもいいので、お願いします。」

私以外の三人は、顔を見合わせ、新八くんと神楽ちゃんは最終的に銀さんに判断を求めているようだった。
銀さんは、あーと言いながら、寝癖のついたままの頭をがしがし、と強く触るとこちらに向き直った。

「わかった、そこまで言うんならそうしてもらう。ただ、働き先が決まったら、俺らにちゃんと言うこと、無理しすぎないこと。これだけは守ってくれるか。」

「はい!ありがとうございます!」

そう言うと銀さんは、いや、こっちこそありがとな、と言ってくれた。万事屋のことを考えてくれてありがとな、ということらしい。そうと決まれば、さっそく働く場所を探さねば。
ちょうど皆食べ終わったみたいなので、後片付けをして、町に出よう。
一人で行かせるのはまだ心配とのことで、銀さんが着いてきてくれるそうだ。私も道がわからないので安心だ。
神楽ちゃんは定春と一緒にお友達と遊びに出かけてしまった。定春は、万事屋で飼っている大きな犬だ。初めは大きなぬいぐるみかと思っていたら生きていてびっくりしてしまった。もふもふで、かわいいのだ。
新八くんは、一応依頼人が来たときのために、と留守番してくれるみたいだ。

「それじゃあ、いってきます。」

「はい!良い仕事見つかるといいですね。」

そう言って見送ってくれた新八くんに手を振り、銀さんと一緒に歩き始めた。


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