本日は、晴天なり








「椿、」


会いに来たよ。
そう言って公園に待っていたのは、大阪ガンナーズの同じ背番号7番。
ヒョロッとした小柄の男が少し大きいパーカーを着てこちらに手を振る。
ポカポカと太陽に照らされる彼はマイペースながらに何分前から待っていたのかわからない。
とりあえず駆け寄って頭を触ったら、ヘニャっと笑った。

「久しぶりだね、窪田」
「うん、久しぶり」
「一ヶ月ぶり…かな?」
「多分…、うん」

前日に携帯にメールが来ていた。
内容は『二日間オフだから椿のところ行く』という至って簡潔な文だった。
唐突すぎて頭にハテナを浮かべながら『わかった、待ってる』とだけ返信した。
そしたら、本当に来た。
それが今の現状。
ちょうどこっちもオフで良かった。

「ひとりで来たの?」
「ええと…シムさんたちと、」
「志村さん、?」
「東京に行くって言ったら、遊びに行きたいってみんな言ったから」
「そっか…じゃあ、ガンナーズの選手が東京にいるんだ」
「嫌、だった?」

ひょいっと顔を覗くように見る。
窪田の表情はよく読めないときが多いけど、付き合うようになってからは窪田の気持ちは読み取れるようになった。
今は少し、不安な顔。

「嫌じゃないよ、嬉しい」

本心を伝えると、嬉しそうに笑顔を浮かべた。
つられてこっちも笑みがこぼれる。
不意にギュッと手を握られた。
窪田の手は温かくて、気持ち良い。

「椿、寂しかった?」
「うん、会えないとやっぱ、寂しい、かな」
「俺も椿が離れてるの、寂しい」
「ふふ、仕方ないよ」
「でも今日はずっと一緒にいられるよ」
「うん、」

これも遠距離恋愛なのかな。
東京と大阪は遠くないし、電車やバスでも行けると思う。けれど。
互いに忙しくて会えないのは、やっぱり寂しい。
いつもテレビと電話でしか会えない。
でも、こうしてたまに会える時は、会えなかった分の嬉しさが膨らむからいいんだって。
窪田もきっとその喜びを知ってる。
だから大丈夫、我慢できる。

「好き、椿。好きだよ」

ギュウッと抱き着いてくる。
普段はサッカーのことしか考えてないから、こうして甘えられると何だか子供みたいで可愛い。
窪田の匂い、落ち着くなあ。
猫みたいに顔を擦りつけてくるのが少しくすぐったい。

「俺も、窪田が大好き」

頬を赤らめてフニャっと笑うと、いきなり唇にキスをくれた。
お互いに慣れてないせいか唇と唇をただ重ねるだけの単純なキス。
それを何回か繰り返す。
最後は少し長めに唇を重ねて終わる。
ある意味、彼の癖なのかもしれない。

「…窪田って、キス、好きだよね」
「?椿が、好きだよ」
「う、うーん…まあいいか」

純粋な彼の愛情表現にはいつも照れてしまう。
すごく嬉しそうにこっちを見ているので頭を撫でてあげたら、ワハッと笑った。

「せっかくだから、浅草回る?」
「うん」
「夜はどうするの?」
「ホテル、あるよ」
「あ、じゃあ大丈夫か」
「椿も、一緒に泊まろ」
「え!?お、俺も?」
「お金は、監督持ちだって、シムさんが」
「ええ…、ど、どうしよう…」
「?、嫌?」
「う…わ、わかった」

今度ガンナーズの監督さんにお礼をしなければ。
目の前の窪田が早く行きたそうにソワソワしているので、そのことはまた後で考えることにした。
手をひかれる、心地いい風が吹く。
 

本日晴天、デート日和。










(おまけ)


「そういえば、ガンナーズの人はどこに?」
「多分…浅草に、いると思うよ」
「あ、そうなんだ」



―浅草―


「なぁーシムさん、タコ焼き屋ないんかぁ?東京って」
「うーん…クボタンはあると思うって言ってた気がするんだけどなあー」
「ぶちぶち言うとらんで、お前も探せぇカタァ!」
「うるさいわボケ!探しとるやろ!」
「もうお好み焼きでいいんじゃない?ホラ、もんじゃだってあるんだし」
「シムさん!俺タコ焼き食べたいねん!」
「そうやそうや!タコ焼きないと生きていけんねん!!」
「ええー、めんどくさいなあ」


タコ焼きのイメージが強い
大阪の方すいません

 



110303





 

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