一番最初に


 
早朝、まだうっすらと暗く日の光が出ない時。
俺はふ、と突然目を覚ましゆっくり意識を覚醒していった。
ぼんやりとした頭でぱちぱちと瞼を瞬かせれば一番最初に目に入る恋人が目の前で寝息をたてている。
昨夜の愛の営みやらで着衣はしてないためかその至近距離では少々恥ずかしさというものが沸いてきて瞬時に顔に熱が帯びた。
 
すうすう眠る相手の頬にそっと手を触れる。
そうだ、もう片思いじゃないんだ。
長いこと想い続けて他の奴らに邪魔されてきたけど、ずっとこうなることを夢みていた。恋仲になることを。
告白したとき真っ赤になりながら照れ臭そうに俺も好きだよ、と笑って言ってくれたことは一生忘れないだろう。
幸せだ、と思うのと同時にまた、複雑な思いが胸を込み上げてくる。
 
この幸せは、いつまで続くのだろうかと。
 
「…はっちゃん、どうした?」
 
はっと目の前の人物に意識を戻せば、眠たげな目をこちらに向けて不思議そうに問う尾浜の姿。
俺は何でもないよ、と言って勘ちゃんの髪を優しく梳いた。
尾浜はふ、と微笑み、まだ早いからと竹谷の胸の中に小さく収まって目を閉じた。
 
「勘ちゃん、大好き?」
「なんで疑問形なの」
 
はは、と二人分の笑い声が静かに部屋に響く。
勘ちゃんの顔を見たらさっきまで考えてたことが嘘のように消えていった気がした。
幸せすぎて怖いなんて、俺らしくないことを考えていたもんだ。
 
「俺は、勘ちゃんが好きだよ」
「知ってる」
「大大大好きだよ」
「うん」
「…勘ちゃんは?」
 
始終顔を埋めているからどんな顔をしているか分からないけど、ちらと見える部位が赤く色づいてることから照れ隠しで顔を上げないのだと気づく。
いや、本当は眠いだけかも知れないけれど。
 
「俺は、はっちゃん以上に好きだよ」
 
小さくはっきり言い放った後にだから早く寝ようと呟いた勘ちゃんは本当に眠たかっただけかも知れない。
しかし、それを聞いた俺は顔を真っ赤に染め口角が上がるのを抑えられないとばかりに目の前の恋人を目一杯抱きしめたのだった。
 
 
 
(起きたら勘ちゃんが一番最初に目に入るな)
(あ、でも今日は朝早いからひとりで静かに戻るよ)
(ええええ!?)
(大丈夫、絶対起こさないようにこっそり抜けるから)
(そういう意味じゃないんだけどなー…)
 

100809



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