暑い、熱い



 
ああ、どうしてこうなった。
 
 
 
「は…っ、留さん…」
「あ、ぁあ…っ!い、さくっ…伊作…!」
 
あつい、暑い、熱い。
体が焼けそうなくらいあつい。
いたるところにつけられた跡はそれ以上にあつくて。その節、気持ちいい、なんて。
 
事の発展はなんだったかと考えてみる。
そうだ、今日は最高気温がずば抜けて高いと聞いた。
雲ひとつなく、じりじりと容赦なく照らされる光は、草木からも水分を奪っていくようだ。
異常気象も大概にしてほしい。
部屋にいても、暑くて本も読めやしない。
戸が開いてても風は生温いし、じっとしてても汗がじんわりと浮かんできて、非常に鬱陶しい。
いてもたってもいられなくて、同室の伊作に話しかけてみると。
 
「もっとあつく、なってみない?」
 
ついに暑さで頭がやられたか。
いいや、もともと頭はおかしいか。
若干抵抗してみるが、それも無駄なんだと諦めの色に変わる。
優しく押し倒されて目を向ければ、伊作の楽しそうな笑顔が目にうつった。
 
「こんな昼間っからヤる奴がいるか…」
「いるじゃない、ここに。」
 
はあ、とため息をついて苦笑する。
 
首筋に跡をつけていく伊作の唇が熱いなあ、なんて思っている内に衣服をゆっくり剥がされ、肌をあらわにされて。
前掛けも外されれば、汗でしっとりと濡れている体が妖美にうつし出される。
伊作は思わず息を呑んだ。
汗ばんだ額にはりつく髪も、潤んだ瞳も、紅潮した肌も、全てに欲情する。
 
これも、暑さのせいだというのか。
 
「…伊作…」
 
愛しい相手の名前を呼ぶ声にも無意識に熱がこもってしまう。
密着させた体から伊作の形が変わっているのが伝わってきて、益々顔を紅潮させる。
は、と小さく息を吐けば、その息ですら期待と快感の熱が含んでどうしようもない。
不意に間近にある伊作の唇が自分のと重ねられて、別の熱さを感じながら目を閉じた。
 
「留さん、大好き、愛してる」
 
自分も余程暑さにやられたようだ。
 
熱い体が、伊作の触れる熱い手が、気持ち良い。
快感を感じてるその行為に苦笑する自分とは反対に、伊作は幸せだ、という満面の笑みが浮かべて。
 
何度目かのため息をついた。
もう、暑さのせいにしてしまおう。
 



夕刻にはきっと涼しい風が入るのだから。
 
 
 

100803



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