君とラムネ | ナノ
入学してから数日。今のところ一度も遅刻することなく通えているため、気分よく高校生活を送れている。授業中にこの前ジャンに借りた漫画を読んだり、隣のアニとも仲良くなれたりとなかなか充実している。しかし、ミカサちゃんと友達になってもらおうと日々格闘していた。ジャンに対抗すべく、いつもアドレスを聞こうと彼女を追いかけ回す毎日だった。


数日前、私はチーハンくんに声を掛けた。アニが「あいつなら一緒の中学だったから助けてくれるんじゃないの?」とアドバイスをくれたのだ。

「は…?俺のことか?」
「そうそう!君のこと!」
「俺にはエレンって名前があるんだけど」
「じゃあエレンくん」

エレンでいいよ、と言ってくれたので次からはチーハンではなくきちんとエレンと呼ぼうと決めた。そしてミカサちゃんと友達になりたいという説明をし、どうにか助けて欲しいとお願いしたところ、彼はまだ幼さの残るあどけない笑顔で快く了承してくれた。エレンは打ち解けやすく漫画の話で盛り上がっているとドアの方から「エレン、先生が呼んでる」とミカサちゃんの声がした。チャンスと思ったが、私もエレンについて行く、とすぐに居なくなってしまった。

その他にもチャンスが何度か訪れたのだが、コニーに邪魔されたりサシャに呼ばれたりとタイミングを逃すばかりで、一緒に下校する時にジャンに馬鹿にされた。自分は見てるだけのくせに!私は名前は覚えてくれたぞ!
そんな私にマルコは「ナナコ、頑張って」と応援してくれたのだ。ジャンはマルコを見習うべきだと思いながら肘鉄を食らわせた。


そして今日、やっとチャンスが来たのだ。

日が傾きかけて夕日で真っ赤に染まる教室。外から野球部やサッカー部が声を出しながら活発に活動している声が聞こえる。


「ミカサちゃん!」
「ナナコ、どうしたの」

日直の仕事を終えて帰る支度をしている彼女に声を掛けた。名前を呼ぶと、きれいな髪を耳に掛けながら私の方へと振り向いた。ジャンが惚れた気持ちが分かる気がする。女の子なのに何故かドキドキしたのだ。


「あのね、私、ずっとミカサちゃんと友達になりたくて…」
「別に、かまわない。私は、ナナコが話し掛けてくれた時から友達だと思った」

え、本当?と聞くと本当、とだけ短く答えてくれた彼女を思わずありがとう、と抱き締めた。まさかそんな風に思っていただなんて考えてもいなかった。そして念願のアドレスを交換することができたのだ。
エレンを捜すからまた明日、と彼女は教室から出ていった。一人教室に残された私はガッツポーズをしてから走って家まで一直線に帰った。




ただいま、とまだ誰も居ない自宅の鍵を開けて入る。そして手を洗ってからリビングのソファーに直行して寝っ転がりながら携帯をブレザーから取り出した。さっきミカサちゃんからメールが来たのだ。内容はミカサでいいってこととエレンの話だった。本当にエレンのこと好き?なのかな、と疑問に思いつつ返信をした。ジャンに早速自慢してやろうと二階へ上がり自分の部屋に入る。そして窓を開け、丸めた紙屑を隣の部屋の窓に投げつけた。
やはりまだ4月上旬の夕方は冷える。カーディガンの袖を少し伸ばして手を隠した。


「何だよナナコ。また投げやがったな」
「ごめんごめん、直接自慢してやりたかったからさ」

今は携帯あるんだからメールなりワン切りしろ、と窓の向こう側の住人、ジャンに怒られてしまった。つい昔の癖で紙屑を投げてしまうのだ。お互いを呼ぶ時は部屋が隣同士なためいつも窓に紙屑を投げていた。家の間も広くないためここから出入りしたりもする。


「で、今日は先帰れって言ってたけどお前何してたんだよ」
「そのことなんだけど、私ついにミカサとアドレス交換できた!」

渾身のドヤ顔で電話帳のミカサのページが表示された画面をジャンの方へと突き出した。ジャンは視力もいいためよく見えただろう。目が見開いている。


「まじかよ、お前…」
「いいでしょー」
「しかもミカサって呼び捨てとか…」

さっきメールでそう呼んでってきたと説明したら更に顔が青ざめ、一人でぶつぶつと何か言っていた。今回はどうやら私の勝ちのようだ。マルコとアニにもメールして報告しよう。そう決めて、一人百面相しているジャンを放って置いて、私は窓とカーテンを閉めてからベッドに寝転がりメールを打ち始めた。


友達作戦を決行します



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