君とラムネ | ナノ
「おいどうした、ジャン」
「行かないのかい?」

コニーとマルコが声を掛けるとやっと我に返ったように動き出した。

「あれー?もしかしてジャン、あの美人さんが気になるの?」
「ば、馬鹿!ちげぇよ。ナナコは黙ってろ!」

理由の無い暴力がナナコを襲う…なんてふざけてたらもう一発頭にげんこつを喰らった。女の子に暴力はよくないぞ!だからいつも義理チョコしか貰えないんだ!あ、でも一回だけ後輩から貰ってたっけな…卒業式でやめなよ、と言いつつも気になってチラチラと見るマルコと一緒にその後輩から告白されている現場を覗き見したことを思い出した。その話もいつかしようじゃないか。


まあまあ、とマルコがその場を宥めて先へと進んだ。真新しい青のラインが入った上履きを取り出し、踵を踏み潰さないようにと気を付けながら履く。こんなに気を付けるのは最初の数日だけであり、いつの間にか見事に踏み潰されているのだろう。階段を上り、廊下の奥へ。こりゃ昇降口から遠いな…ちゃんと家を出発しなければ遅刻する。ナナコにとって、いかに昇降口から近いかが重要なのだ。目的地に到着し扉の前に立つ。ここが1-Aか。よくも私をこんな遠い教室にしたな!


四人で中に入ると既に多くの生徒がいて、話したりしながら自由に過ごしていた。黒板には入学おめでとうの文字と本日の日程が書かれている。そして、端の方に座席が印刷された紙がマグネットでと留められていた。


「げ、ナナコと隣かよ」
「うーわ、本当だ。ここでも隣かぁ」
「君達よく隣になるよね。喧嘩したらだめだよ?」

マルコに釘を刺され、ジャンが呆れ顔をし私は項垂れた。家でも学校でも隣なのだ。小学校から殆ど同じクラスであり、席もマルコの言うとおり隣になることが多かった。今回は廊下を挟んでいるけど、何なんだ。えーっと、反対側の隣はアニ、ちゃんかな?格好いい苗字だ。仲良くできるといいなぁ。


コニーは自分の席で売店で買ってきたであろうクリームパンを血相を変えて夢中で頬張っているサシャの元にいた。あんな細い身体にどうやって詰め込んでいるのだろう。いつも疑問に思う。




「おはよう、もうすぐ入学式が始まる。体育館に向かいなさい」

薄ピンクの花のブローチが付いたスーツを着た先生が教室にいた生徒達に声を掛けた。コニーと一緒にパンにかぶりつくサシャを廊下に出させようと引っ張っていく。

「ナナコ、久しぶりですね!パン、食べます?ここのクリームパンはおすすめですよ!でもメロンパンも!」
「久しぶり!でも今は体育館に行くからパンは置いてこうね」
「後で俺にもくれよなー!」


おーい、とマルコが私達三人を呼んだ。ジャンと待っていてくれたようだ。体育館はこの棟ではなく渡り廊下を歩いた先の別の棟にある。また歩くのか。そういや、あの黒髪美人さんも一年生かな?



体育館にクラスごとに整列してから吹奏楽部の演奏を聴きながら入場する。保護者や先生達が拍手で迎え入れる。やはり大きな学校だけあって人数も多い。おばさん、どの辺に座っているんだろう。こんなにいるから分からないや。あんまりキョロキョロしすぎると不自然だし。

校長や教頭、来賓とながーいお話の三連撃。なんとか寝ずに目を開けて聞くことができた。最後に新入生代表の挨拶、と司会進行の先生が言うと一人の生徒が別席で待機していたところから歩いてきて、礼をしてから登壇した。あの例の美少女じゃないか!と心の中で叫んだ。


「本日は………」

透き通るような声で淡々と文章を読んでいく。この代表挨拶は主席で合格した者が行うのだが、彼女が…美人で頭脳明晰って世の中理不尽だ。私なんか昔ジャンから運動だけの脳筋野郎と馬鹿にされたのだ。運動だけでも取り柄があることにとりあえず神に感謝しよう。

「……新入生代表、ミカサ・アッカーマン」

いつの間にか頭の中で考え事をしているうちに挨拶が終わっていた。ミカサちゃん、か。ぜひとも友達になりたい。友達になったらジャンに自慢してやるんだから。


神は僕を嘲笑う



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