君とラムネ | ナノ
外へと出てジャンの部屋を見る。まだカーテンは閉まっていて、起きてないことを示していた。ジャンは起きてすぐにカーテンを開ける癖があるから分かりやすい。


ふふーん、と鼻歌を唄いながらお隣の門を通り、インターホンを押した。庭を見てみると、今おばさんが育てているチューリップを発見した。赤だけでなく白や黄色、ピンクといった様々な色の蕾がもう少しで咲こうとしている。相変わらずガーデニングが好きなんだなぁと思いながら眺めて暫くすると、中からばたばたと音が聞こえてきてドアが開く。


「ごめんよ、ナナコちゃん」
「おはよう、おばさん!」
「おはよう、今日は早いじゃないか!今入学式に出席する準備で忙しくてね。それとお父さんも今日から出張だから準備手伝ってて」
「お忙しいですね…」
「それでね、ジャンの奴まだ寝てんだよ。悪いけど起こしてきてくれる?」

分かりました、と了承し、「おじゃましまーす」と中へ入った。おばさんはまた部屋の奥へと消えてしまった。主婦は大変なんだなぁ。


二階へ行くと、おじさんに会った。朝の挨拶を交わすと、制服可愛いね、と素敵なスマイルで言ってくれた。格好いい。背も高いし仕事もできるし、私こんな人と結婚したい。手を振りながら階段を下りていくおじさんを見送る。すると一階から何してんだい!と怒鳴るおばさんの声が聞こえた。ちょっと抜けてるおじさんとしっかりもののおばさんはきっと相性がいいのだろう。



「起きてるー?入るよー」

私はジャンの部屋に入る時はほぼノックはしない。だからたまに怒られるのだけど。声がしないためガチャりとドアを開けて入ると、目の前には散らかった部屋が広がっていた。床には紙屑や漫画が放り投げられていて、机の上には発売日に買って既に読んだであろう新刊が放置されていた。後で借りよう。

とうの本人はというと、布団を半分以上落としてベッドで寝ていた。枕元には先月換えたばかりの私と偶然同じ機種の黒い携帯が転がっている。恐らく弄ったまま寝落ちしたと予想できた。


「起きてよー!遅刻するよー!」
「…ぁ?……るせぇな…」
「いいから起きろ!」

ジャンに掛かっている残り半分の布団を退かし、肩を揺らして起こそうと試みる。

「ねぇ!早くー!」
「…なんだよ…うるせぇなババ」
「やっと起きた」
「は…?ナナコがなんでいんだよ!目覚ましどうして鳴らねぇんだ!」

おばさんではなく私であると気付き、勢いよく起き上がって携帯を確認した。するとどうやら目覚ましをセットする前に夢の中へと旅立ってしまったため、今日鳴ることがなかったのだろう。ざまぁみやがれ!

「お前いつまでここにいんだよ」
「え?」
「俺、今から着替えるんだけど」
「あわわわわ、ご、ごめん!」

ったく…と溜め息をつきながらワイシャツを着ようと脱ぎだしたため、部屋の外へとそそくさと出ていくことにした。なんだよ、私がいても着替えようとしてるじゃん!

いつも私が早起きすると、ジャンは寝坊するという謎が昔からある。まぁいつもはその逆のパターンが多い。しかし奴は何故か遅刻しない。彼曰く、俺はできる男だかららしい。確かに私何かよりも頭もいいし、受験勉強を嫌々言いながらも手伝ってくれ、有名な進撃高校に合格することができた。あれはもう奇跡だったと思う。


「行くぞ、ナナコ!」

ドアが開きネクタイを結びながらジャンが部屋から出てきた。私より結ぶの上手いんだけど…私は練習しようと心の中で誓い、一階へと下りていった。



「ジャン、やっと起きたかい!まったくお前は…ナナコちゃん、ありがとね」
「うるせぇババア!」
「いいですよ!中学の頃はいつも助けてもらってましたし!」

「いってきます」と声を掛けて、おじさんとおばさんに見送られながら二人で外へと飛び出した。おばさんは後から来るらしい。


「ジャン、どうしよう!もう8時過ぎてるよ!」
「仕方ねぇな、今日はチャリで行くぞ」

そう言ってジャンは車の横に止めてある自転車の元へと走った。それなら私取りに戻る、と言いかけたら。

「時間が勿体ねぇ!いいからさっさと後ろ乗れ!」

そう言って、ジャンは後ろを指差した。何だかんだ言って優しいのだ。私は急いでジャンの待つ自転車へと駆け出し、後ろへ乗る。その瞬間、すぐにペダルを漕ぎ出した。



「ありがと、ジャン!」
「起こしてくれた借りもあるしな」
「じゃあ新刊も貸して」
「…ナナコお前なぁ」

リュックからガサガサと新刊を取り出し、ジャンの前へと腕を伸ばした。すると、いつの間に!と驚いていた。実はさっき部屋から追い出される時に机から持ち出しておいたのだ。二人はこの後も騒ぎながら学校へと向かった。


少年Aと少女B



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