君とラムネ | ナノ

「おじゃましまーす」

そう言いながらたくさんの人が我が家へとやってきた。玄関にはあっという間にスニーカーやらサンダルでいっぱいとなってしまった。こんなにたくさんの靴で埋められるのは初めてのことで、記念にと思い、ポケットに入れておいた携帯を取り出し、写真をぱしゃり。


「ナナコの家に来るの久しぶりです!」
「悪いな、大勢でおしかけて」
「おい、アルミン!和室もあるぞ!この前はジャンの家しか行ってないからな!」
「エレン、騒がない」

サシャは中学生の頃に何度か遊びに来てくれたことがある。ライナーは普段から礼儀をわきまえているためか、わざわざ謝ってくれた。でも、気にしてないよ、と答えると彼は笑顔を見せた。
エレンはこの前お見舞いにこっちまでやってきたが私の家に入れるのは初めてで、どうやら和室に興味を持ったようで、はしゃいでいたのだが、ミカサによって大人しくさせられていた。


「僕、ライナーとアニとでみんなと食べるためにお菓子とか買ってきたんだ」
「ベルトルト、ありがとうね!こんなに!」
「でも、これじゃあすぐになくなりそうだね」

マルコの言うとおり、恐らく足りないかもしれない。コニーやエレン、そしてサシャによって殆どが食いつくされてしまうだろう。もし無くなったら近くのスーパーにでも買い出しに行こう。
みんなには、適当に座って先に勉強会始めてて、と伝えて、私は買ってきてもらったジュースやお茶などを冷蔵庫にしまうためにキッチンへと向かった。


「手伝う」
「ジャンにしては優しいね」
「ばーか。俺はいつだって優しいだろ」

そうですねー、と適当に答えたら頭を小突かれた。ほら、優しくない!

ジュースは冷やしたばかりなため、作ってあった麦茶を氷たっぷりのコップに注ぎ、リビングへと運んだ。ジャンとマルコが手伝ってくれたため、すぐにみんなの手に渡った。


「ありがとう、美味しいよ」
「冷てぇー!」

暑い中を歩いてきたため、氷で更に冷えた麦茶は身体をひんやりとさせた。クーラーも効いてきたため、みんなの汗も引いてきたようだ。やっぱり夏は麦茶だ。



「おい…この漢文ってどう読むんだ?」
「これはね、まずレ点から…」
「順番さえ理解できれば大丈夫だよ!」

とりあえずコニーにはアルミンとマルコがつきっきりで教えることとなった。この前の小テストで全滅だった漢文から教えてもらっているらしい。きっと秀才二人に教えてもらえば赤点は免れるだろう。


「この文法は、こうだ」
「こ、こうでいいんでしょうか…?」
「サシャ…」
「これはパンについて聞いているんじゃないよ、こうだよ」

ライナーとベルトルト、アニはサシャに徹底的に英語と苦手な生物を教えていた。またパンのことばかり考えているようで、文章にやたらパンを入れたがっていた。もうお腹減ったのかな?


「次にこの方程式解いてみろ」
「わ、分からない」
「まず、代入してこうなる。ので、ここはこうなって…」
「ミカサ!エレンが分からないからって全部解いてあげちゃだめ!」

私とエレンにはミカサとジャンがつき、数学を主に教えてくれることとなり、必死に問題集やプリントの問いと向き合った。
ジャンにはミカサの横に座るように後押ししてやったため、少し緊張しているようだ。その光景を見てエレンとにやにやしていたら教科書で引っ叩かれた。ミカサがいるからか、エレンには手を出せなかったようだけど、なんで私だけ。




一通り勉強を進め、私たち補講予備軍の集中力も切れ始めた。夕方になり、少し日が傾き始めた。しかし、最近は日が延びてきたため、まだ外は明るい。
そして、夜ごはんはどうするか、とお菓子を摘まみながら話し合った。


「とりあえず、近所にスーパーあるけど、何か作る?」
「買ってくるより楽しそうだな!俺、賛成!」
「シチューにしましょう!」
「芋食いたいだけだろ、サシャ」
「でも、シチューなら簡単にできる。この人数なら一気に作れるものがいい、と思う」

案外すんなりとシチューに決定し、早速材料を買いにスーパーへと向かう。私は案内する係として、ベルトルトとライナー、アニ、ジャンがついてきてくれることになった。
残りの人は引き続き勉強でもして待っている、と言っていて、私たちを見送ってくれた。


「アニがいてくれれば材料何買えばいいか、安心!」
「ナナコ、あんた確か料理駄目なんだったね」
「こいつは俺と同じレベルだ」

話をしながらだとあっという間に目的地に着く。
一通り買い終わり、男子たちが荷物を持ってくれた。流石はバスケ部軍団。じゃがいもや人参など結構な量があるため重いだろうが、軽々と運んでいる。私とアニは軽いものが入った袋を渡された。


ただいま、と家に帰ってから早速シチュー作りを始める。
ミカサやアニを中心に、マルコやアルミン、ベルトルトが料理上手なため頑張ってくれた。
私は邪魔になるだろうから、大人しくフランスパンを切って皿に盛り付ける作業をすることにした。パン屋さんで売っていたまだ焼きたてのものを買ってきた。ふんわりといい匂いがする。



「いただきまーす!」
「こ、これは!」
「サシャ、まだたくさんあるからがっつかないの」
「うめぇな!」

鍋を二つ使って作ったシチューは瞬く間になくなってしまい、フランスパンも全てお皿から消えてしまった。食べざかりがこれだけいればそうなる。特に大食いが若干一名いるため、その犯人がパンを食いつくしたようなものだ。


「じゃあそろそろ僕たちはジャンの家に行こうか」
「そうだな!ジャン、ゲームしようぜ!」
「コニー…荷物多いと思ったら、ゲームとコントローラー持ってきてたのかよ」
「ご飯とかありがとう、また明日ね」

せっかくみんないるのなら、明日も勉強会をすることにしたのだ。
騒がしい男子たちを隣の家へと見送り、残った女子で先程の買い出しの際にこっそりと買ったゼリーを食べた。


「このゼリー、おいしいですね!」
「私のおすすめなんだよー!」
「ナナコがこっそり会計の時に持ってきたんだよ」
「エレンとアルミンにも食べさせたい」
「クリスタとユミルも予定が無ければよかったんですけどねぇ」


それから順番にお風呂に入り、少し夜更かしをしようと、布団に潜ってからも話を続けた。部屋の灯りはなかなか消えることはなかった。



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