君とラムネ | ナノ

連休も終わってしまい、また学校へと通う日常が始まった。
お母さんたちは両手にお土産の袋を提げながら、満面の笑みで帰ってきたのだった。私とジャンもなんとか生活できたが、料理に関しては揉めた。けれど課題も全て終わらせ、特にこれと言った問題は発生しなかったと思う。


今日は一限の数学の開始時間に間に合わなかった。所為、寝坊だ。まだ眠い目を擦りながら、二限の授業のために古典の教科書を引っ張り出していると、携帯に着信が入った。確認すると、ハンジ先輩からであった。久しぶりに部室にみんな集合という内容であった。
その後の文章には先輩と同じクラスであるリヴァイ先輩について、最近の行動やら身長についての話などがつらつらと数十行に亘って書いてあったが、このメールはグループ設定だからリヴァイ先輩本人にもしっかり届いているだろう。きっと今頃三年生の教室がある方では死闘が繰り広げられているのだろう。

ハンジ先輩、今日の放課後は生きて会えるといいなぁ。


「さっきから気持ち悪いな、一人で笑ったりして」
「うるさいなー!ジャンだってミカサのこと見てニヤニヤしてるじゃん」
「ば、馬鹿!声がでけぇ」

隣の席であるジャンと言い争いをしているとサシャとコニーがやってきて「これ、どうぞ!」と涎を垂らしながらサシャはパンを差し出してきた。購買のおばちゃんがサービスしてくれたようだ。コニーは「喧嘩なんかしてねぇで、お前らは半分こでもして食ってろ!」と言って席に戻ってしまった。




「…はい」
「ナナコ、お前…これ…半分に見えるか?」

貰ったメロンパンを私が仕方なく半分に割ってやろうとした結果、見事に半分とは言い難い割れ方をしてしまった。昔から半分にするのが苦手であったのだが、まさかこんなに汚く割れると思ってもいなかった。なんだ、これ。大きな方から大体半分になるように分けたかったのだが、あのきれいな丸いメロンパンの姿はもう無く、無残な形へと姿を変えた。表面のクッキー部分はボロボロに剥がれ、心なしか潰れている。あぁ、あんなにふわふわだったのに…

休み時間が終わりそうだったため、二人は黙ってメロンパンだったものを食べた。ジャンは「俺が割ればよかった」と授業が始まる直前にぽつりと呟いていた。ごめんなさい。



放課後、エレンたちと一緒に最上階の一番奥にある部室へと向かった。ドアを開けると、そこには既に先輩が居た。絆創膏をそこいら中に貼ったハンジ先輩と不機嫌そうな部長、リヴァイ先輩。ミケ先輩は静かに座って二人なんか気にせずに優雅に紅茶を飲んでいた。


「こ、こんにちは」
「やぁエレン!お、みんなも来たんだね!」

怪我をしていても呆気らかんとしているハンジ先輩は本当に凄いと思う。前にペトラ先輩が、リヴァイ先輩を怒らせると本当に鬼のように怖いと言っていた。去年は部室のドアが吹っ飛んだらしい。だから他のドアよりもきれいなのか、と納得した。

後からグンタ先輩たちもやってきて、部員が一通り揃ったところでリヴァイ先輩が話し始めた。


「さっきのメールは忘れろ。このくそ野郎が」
「ごめんよ、リヴァイー」
「…本題なんだが、毎年行われる行事のことだ」
「先輩、まさかあれですか」
「あの、あれって何ですか?」
「おい、一年、分かんねぇのか?あれっているのばっ…」

アルミンが質問すると、オルオ先輩が舌を噛んだ。これもよくある風景の一つだ。そのため、エルド先輩があれについて教えてくれた。
あれとは、学校行事の一つである『歩く会』のことだ、と言われた。そう言えばそんな行事もあったな。学校見学で貰ったパンフレットを思い出した。

歩く会、健康な身体作りも大切である、という校長先生の思いによって数年前から行われているらしい。それは生徒一人一人の体力作りのためでもあるが、部対抗で学年ごとに男女別で上位に入った部員が多い部活に部費を増やすというご褒美があるというのだ。


「今年は今月末に行うらしい。部費のためにもお前ら、死ぬ気で早くゴールしろ」
「分かりました!」
「俺たちなら大丈夫だよな」

ミケ先輩以外の人は張り切っているように見えた。エレンは勝負ごとに燃えているようで、「絶対に負けねぇ」と闘志を露わにしていた。ミカサも表情こそいつもと変わらないように見えるが、恐らくエレンが頑張るなら私も頑張ろうと思っているのだろう。
ところでリヴァイ先輩は部費で何をするのだろうか?


「アルミン、元気無いね」
「あ、あぁ。気にしないで。僕さ、運動が苦手だからさ…みんなの足を引っ張る形になるかもしれないって考えたら、ね」
「おい、アルミン!そんなくだらねぇこと考えてんのか?」
「大丈夫、アルミンの代わりに私とエレンとナナコでカバーする。ので、自分のペースでゴールを目指せばいい」
「そうだね、私も頑張るよ!」

だから元気出してね、と三人で励ますと彼は「ありがとう、みんな」と笑顔を見せた。
とりあえず今日は部室をきれいに掃除したら解散だということなので、部員全員で少々大掛かりに清掃に取り組んだ。前回集まった時は掃除のやり方というものを基本から様々なことをリヴァイ先輩に叩きこまれた。汚れを許せないらしく、部室は常にきれいにしておくべきだ、と言っていた。
だから今回も徹底的に掃除をするのだ。「きれいじゃないと落ち着かないんだよ」とハンジ先輩が馬鹿にしたようにゲラゲラと笑いながら話すとまた部長との追いかけっこが始まってしまった。きっと仲がいいからこそハンジ先輩とリヴァイ先輩は本音で話せるし、ミケ先輩は黙って見ていられるのかもしれない。これもこの部活の風景の一部なのだ。


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