君とラムネ | ナノ

ぱっと目が覚めた。携帯を開いて時計を確認するとまだ5時半過ぎ。6時に起きるつもりで目覚まし時計をセットした筈だったが、まぁいいか。寝坊するよかマシだ。
そう思ってベッドから起き上がり、一階へと下りていく。朝飯、冷蔵庫にあるのでなんとかしねぇと。適当にレンジで温めて一人で食べ、歯を磨いて制服に着替えた。そして、ジャージを一応たたんで鞄の中へと詰め込んだ。そうだ、ババアに頼まれてた花の水やりでも今のうちにやっとくか、と外へと出てホースで水を撒いた。こんなもんでいいだろ。

携帯を部屋に忘れたため二階へとまた戻った。カーテンを開けるとまだあいつの部屋のカーテンは開いていなかった。だから、まだ寝てるな、と確認できた。まだ少し時間あるし、起こしに行ってやろう、と戸締まりをしてからナナコの家へと向かった。
チャイムを鳴らしたが反応無し。ナナコのおばさんから預かっていた合い鍵をポケットから取り出して鍵を開けた。中に入った瞬間、目覚まし時計が鳴り響く音が一階まで聞こえる。一体どういう神経してんだ、あいつ。


「起きろよ、おい」

身体を揺すっても、呼び掛けてもナナコは目を覚まさなかった。ただ、うーと唸っているだけで、一向に起きようとしない。こんだけうるさきゃ普通起きるだろ、と一発軽く頭を叩いた。いつもならすぐに怒るのだが、今は夢の中にいるため何も言ってこなかった。腹出すなよ、ったく。
仕方なく書置きだけ残してナナシ家を後にした。俺まで遅刻したくねぇからな。



「おはよう、ジャン。珍しく遅かったね、寝坊?」
「おう、マルコ。ちょっとな」


学校に着くと、既に他の一年は来ていて準備を始めていた。部室へ向かい、急いでジャージへと着替えて俺も準備に取り掛かった。クーラーボックスに氷を詰め、そこに飲み物を入れた。こういう時にマネージャーでも居ればいいよな、と思った。中学の頃は数人いたのによ。
そんなことを考えながらマルコとクーラーボックスを運んでいると、クラウス先輩に呼ばれた。


「おはようございます、どうしたんですか」
「ジャン、君ってナナコちゃんと家が隣なんだろ?」
「え、はい。そうですけど…何で知ってるんですか?」
「この前聞いたんだ。でさ、今日の練習試合見に来るって言ってたんだけど、一緒に来てないのかい?」
「あいつなら寝坊です。起こしに行ったんですけど…」
「そうなんだ、ありがとう」

先輩はナナコと友達なんですか、と質問したら「今はね」とだけ爽やかに笑ってアップをしている試合に出る人たちの方へと戻ってしまった。
今はってことは、何だ、あれか?好きってことなのか?先輩がナナコを?そうか、だから練習試合に呼んだのか。納得した。まぁ俺には関係無いことだ。



暫くしてナナコがマルコと一緒に体育館にやって来た。試合開始時刻が遅れていたため、間に合ったようだ。しかし、口喧嘩をして気まずい雰囲気になってしまった。あいつはわざと俺を避けて一番遠くのライナーの隣に座った。その後、昼飯を途中で買いそびれて無かった俺もナナコと一緒にコンビニまで行くことにした。



気まずい。何を話せばいいんだ?先輩がナナコのことが好きだと知って、何だか話してはいけないんじゃないか、と思ってしまい、前を歩くナナコになかなか話し掛けることができなかった。
いきなりナナコが立ち止まって「ジャン」と俺の名前を呼んで振り返った。しかし、何故か俺は切れ気味に文句を言ってしまった。何してんだ、俺。その後、余計に気まずくなってしまい、先にコンビニまで歩いた。


俺はさっさと食べたいものを選んだ。炭酸が飲みたくなったため、飲み物コーナーへと行った。すると、隣のアイスケースの前で、後からきたナナコがじっと中を見つめていた。だが、諦めたのか、お弁当コーナーの方へと歩いて行った。仕方ない、機嫌取りじゃないが買ってやるか。あいつが好きなソーダ味のアイスを一つ取り出して、レジに持っていった。

外へと先に出てナナコを待つ。その間に炭酸を袋から取り出して、プシュッとキャップを開け、ごくり、と一口飲んだ。口にピリピリとした甘さが広がった。


ナナコが買い物を終えて、コンビニの中から出てきた。そしてさっき買ってやったアイスを渡すと、びっくりしたようにみるみると目が大きくなった。アイスを受け取ると「ありがと」と小さく言った。これで一応仲直りできた、のか?と思い一安心した。
一口くれると言ったため、俺は思いっきりアイスを食ってやった。今度は炭酸とはまた違った甘さが口に広がる。やっぱ炭酸より甘いな、これ。


学校に戻ると、マルコ達も安心したような顔をしていた。俺はおにぎりの包みを破ってかぶりついた。すると、先輩がナナコを呼んだ。その場に居た俺だけが知っている。先輩がナナコのことを好きだっていうことを。

あいつが戻ってくると、マルコとライナーが質問し始めた。ナナコはたじろいでいたが、友達だとしか答えなかった。ベルトルトは興味なさげに見えて一番気になってそうだし。別に俺は関係無い。ただ知ってるだけで、ナナコとはただの幼馴染なのだから。
俺は何も言わずに黙っておにぎりを食べ続けた。


君はまだ知らない



back
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -