君とラムネ | ナノ
私が女子高生になり数十日、入学した時にはあちこちで満開の桜の花が見られたが、それらは今ではもうすべて散ってしまい、葉桜となってしまった。クラスにも馴染め、授業も何かと必死に板書しながら寝ることなく無事に4月が終えられそうだ。まだ遅刻もしていないし、駆逐部での先輩方とも楽しくやれている。オルオ先輩がよく後輩である私たちに突っかかってくるが、その時はペトラ先輩が説教をしてくれるため、特に大きな問題は無い。しいて言えば、ハンジ先輩の暴走をリヴァイ先輩に止めさせられることが一年生の役目とされたことが大変であった。


来週から待ちに待ったゴールデンウィークが始まる。今朝、お母さんから「お父さんが連休中はお休みとれるみたいだから、お隣さんと旅行に行くわよ」と言われた。でもジャンが休みの間にも部活があるかもしれないから聞いておいてと頼まれたのだ。しかし、私は遅刻しそうだったので急いでいたため、適当に返事をして家を出た。案の定すっかり忘れてしまっていて、さっき授業がすべて終わった後にお母さんからメールがきて思い出したところだ。だが既にジャンは部活へ向かった後だった。
仕方ない、と携帯をブレザーのポケットにしまい、リュックを背負って教室を後にした。ミカサは掛け持ちしている剣道部へと行ってしまい、エレンとアルミンは用事があると言っていたので、すぐに帰ってしまった。相手をしてくれる人がいないため、とりあえずバスケ部のところへ行って練習でも眺めていようと思いつき、長い廊下をのんびりと歩いた。途中、宿題を取りに戻ってきたコニーと出会って、連休中に出される数学の課題について話し、もし分からなかったらお互い助け合おうと約束した。


体育館は各部活で交代して使われている。バドミントン部である同じクラスのミーナが、今日は近くの体育館に行って練習だと言っていた。だから、バスケ部とバレー部がこの学校の体育館を使用している筈だ。体育館前に貼られた振り分け表を見ると、第二体育館がバレー部となっていたため、ジャンはこっちで練習していると確信した。そっと扉を開けて中を覗く。すると、こちら側がちょうど男子バスケ部だったらしく、休憩していたマルコと目が合って、私の方へと来てくれた。

「ナナコ、どうしたの?もしかしてジャンに用事?」
「お疲れマルコ、部活中に邪魔してごめんね。そう、あいつに用事。待ってる間に練習でも見てようかなぁと思って来たの」

「それなら二階に上がって見てたらどうかな」と提案してくれ、中へと入れてくれた。ステージ側が女子バスケ部だったため、後方の二階を教えてくれたのだ。そこに行くと、何人かの女の子がキャーキャーと騒いでいた。きっとかっこいい先輩でも見ているのだろう、とその人たちを横目に一人、端の方でリュックを下ろして練習風景を眺めた。


一年生はまだコートに入れないらしいため、基礎体力を鍛えるための筋トレがメインのようだ。コートの中では先輩方が入って試合の練習をしている。奥の女子バスケ部からも掛け声がよく聞こえてくる。バスケ部って怖いよね、体育の授業でやって時は本当に戦場のようだった。小学生の頃に経験していたとはいえ、やはり現在進行形で練習している子には適う筈もなく。ボールの奪い合いもだが、とりあえず罵声が次々飛び交う。隣で試合をしていた男子が皆目を丸くしてこちら側を見ていたくらいだ。それくらい凄まじかった。けれども、この学校は比較的穏やかな方だ。私の中学校が特別激しかったのかもしれないということで納得することにしよう。
そんな考えを巡らせながらふと下を見ると一人だけ目が合った。さっきまで試合をしていたから先輩だろうか。



時計の針も4時を過ぎた頃、今度は一年生がコートに入って軽く試合をするようだ。久々にマルコとジャンの連携が見られるためワクワクしていると、マルコがおーい、と手を振ってくれたから私も頑張れーと振り返した。隣にいたジャンは「なんでお前がいんだよ!」と怒鳴ってきた。私が居ちゃだめなのか。しかも今更気付いたのか。ライナーとベルトルトも気付いてくれたらしく、「ナナコ見てたのか」とライナーが言った。最初は喋りづらいと思っていたのだが、ジャンたちの友達と知ってあちらから話し掛けてくれたのだ。今では普通に会話をするため、アニと同じ中学校だったことを知った。


今日の練習は無事に終わったようで、皆ボールを片付けたりモップ掛けをしたりと帰る準備を始めた。みんなかっこよかったなぁ、と思いながら私は一階へと下りて外で待つことにした。ベルトルトとすれ違った時に、ジャンには外に居ると伝えておいて、と頼んでおいた。


「さっき練習見てた子だよね?」
「あ、はい。そうですけど」

ドアにもたれながら携帯でゲームをしながら座って待っていると、さっき目が合った先輩に話し掛けられた。黒髪のなかなか爽やかそうな印象の人だ。恐らく一年生が主に片付けを行っているため先輩は先に出てきたのだろう。とりあえずアドレス交換してくれないか、と頼まれたので、人生初友達以外の男の子から交換しようと言われ心の中で舞い上がり、いいですよ、と了承した。
すぐ後に「ナナコ、待たせた」とジャンが体育館から出てきたため、先輩はそのまま「後で連絡するね」とだけ言い、手を振って帰ってしまった。

「さっきの先輩じゃねぇか」
「あ、うん。まぁそのことは置いといて…」
「そうだよ、なんでナナコが今日居たんだ?」

あのね…と今朝お母さんに言われたことを話した。でも、やはり休み中も部活が何日かあるらしいので今回は行けないと言われてしまった。それなら大人達の中に子ども一人は寂しいし、ジャンに連休中の課題を手伝ってもらうことにしようと思い付いた。


「それなら私も残る!ジャン、数学教えて!」
「はぁ?この前教えてやっただろうが…」
「アイス奢る」
「サイダーもつけろよな」


何かと奢ると言うと大抵オッケーをしてもらえる。やっぱりむかつくのだけれど優しい。


放課後ロマンス



back
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -