君とラムネ | ナノ
この学校は、新入生は必ずどこかしらの部活に入部しなければならないという決まりがある。4月中に入部届を各部に提出しなければならないのだ。数日前にエルヴィン先生から用紙を配られたのだが、私は未だに迷っている。何故陸上部にしないのか。別に廃部になったとかそういう訳でなく、他のこともやってみたいという思いがあるのだ。一度陸上部には見学に訪れた際は歓迎された。どの先輩方も優しそうだったしいいかなぁ、とも感じた。だから今までのことを続けるべきか、それとも新たなことを始めてみるか迷ってしまう。優柔不断である私にはなかなか決定することができない。アニに相談した際も自分でそれくらい決めなよ、とさらりと流されてしまったのもつい最近のことだ。

とりあえず教室で悩むより、校内を歩き回って部活を見て回ろうと決め、ふらふらと用紙を持ちながら彷徨うことにした。水泳やテニスなどの運動部はもちろん、ここは文化部の種類も多いことでも有名なのだ。何でも校長が文武両道を求める人なため、生徒がやりたいことをさせたいという思いもあるためであると入学式の挨拶で言っていた。


幾つか見たり体験させてもらったりしたのだが、やはり自分は身体を動かす方が向いているのでは、と思い始めた。昔ピアノを習っていたが、同時期に始めた小さい子達が通うバスケクラブの方が楽しくて仕方なかった。


「ねぇ君。一年生、だよね?」

今日はそろそろ帰ろうかと階段に座りながらぼーっとしていたら後ろから声を掛けられた。振り返ると目をきらきらと輝かせた眼鏡を掛けた人が立っていた。上履きが緑のラインだから恐らく先輩だろう。何だかこの人、獲物を狙ってるような目をしている。

「あ、あの…」
「とにかくうちの部活を見に来て!さぁ行こう!」

間髪入れずに私を半ば強引に引きずるようにして最上階の奥の教室へと連れていかれた。私が話し掛けようとしても、この眼鏡の先輩は一人でべらべらと目的地に着くまで喋っていたため、何も言えなかった。


「たっだいまー!新入生見つけてきたよー!」

ガラっと勢いよく部室らしき教室のドアを開けると、眼鏡の先輩はにこにこと目尻を下げ、頬を緩めて中に居た人達に叫んだ。一人だけこっちを思い切り睨んでる人がいて私は顔の血の気が引いていった気がした。ここに来てはいけなかったのでは?と思い始めるが足が竦んで動くことができない。

「クソ眼鏡、いつもいつもうるせぇ。あとドアくらい静かに開けろ」
「ごめんねリヴァイ!そう睨まないでよ」
「まぁいい。そいつが新入部員か」
「そうだよ!さっき会ってね」

勝手に二人で話を進めている。あれ、もう私が入部することが決定になってる?眼鏡の先輩も否定しようとしていない。この勝手な会話に割って入ることができず、おろおろとしていることしかできなかった。そしていきなりリヴァイと呼ばれた先輩におい、と言われ咄嗟に返事をしたところ声が裏返ってしまった。

「お前、名前は」
「ナナコ・ナナシです…」
「…ほう、悪くない」

恐る恐る名乗ると三白眼をぎらりと光らせながらジロジロと私のことを見た。

「よし、今日からお前もこの部に入ることを認めてやる。俺が部長のリヴァイだ」
「えっ、あの!私何も分かっていないのですが…」
「あ?何だ、ハンジの野郎から何も聞いてねぇのか」

はい、と小さく返事をするとリヴァイ先輩は眼鏡の先輩、基ハンジ先輩をぎょろりと睨んだ。その視線に怯むことなく彼女は笑いながら軽く謝った。一体どんな神経の持ち主なのだろうか。

「ナナコちゃん、急に連れて来てごめんねー。ここは通称駆逐部!今は去年の先輩達が抜けてしまって廃部の危機に追いやられているのよね」

ハンジ先輩曰く、ここは活動内容は決まっておらず、その日にやりたいことをするらしい。毎日部員が集まるわけでもなく、全員が集まるのは月に数回らしい。とにかく自由を求める人達が主に活動していると言われた。自由、その言葉に何となく興味を持った。一通り説明を終えた彼女にどう、入部したくなった?と聞かれ少し悩んだ。キョロキョロと部室内を見回すと見慣れた顔があった。

「ミカサとエレン…?あといい子くん!」
「おう、ナナコじゃねぇか」

僕はアルミンだよ、と苦笑されてしまった。私は謝って次から名前で呼ぶように伝えた。この三人がいるなら入っても楽しそうだ。入部届に名前を記入して部長のリヴァイさんに手渡した。ここでは他の部の助っ人に行ったりしているので、陸上部にも行くことがあるらしい。去年も何人か駆り出されたと言っていた。


今日は時間も遅くなってきているし、解散ということで私達一年生組は一緒に部室を後にした。次の集まりはメールで連絡が来るらしいので先輩方とアドレスを交換しておいた。とりあえず部活も決めることができたので、私は三人を学校の近くにあるファミレスで夜ご飯でも一緒に食べないかと誘い、三人とも了承してくれたため仲良く昇降口へと歩いていった。


僕らの世界へようこそ



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