「もう!僕は悠太だよ、悟はパパだよ!
おじいちゃんは何回言っても間違えるんだから!」

少年は頬を膨らませた。


「サトル…、」

ユウタ?
誰だったか、それは、嗚呼思い出せない。


「おじいちゃん、お昼だよ、一緒に戻ろう。」

伸びてきた少年の手が当たり、ひらりと右手から鱗が落ちていく――。

少年に手を引かれて、私は岩場を後にした。


「お前は人魚の血を引いている…。」

「はぁ、おじいちゃんてば、また何か変な事言ってる。」


穏やかな穏やかな、晴れの日。手を繋ぐ老人と少年。それはとても微笑ましい光景であった。



「ただいまー、

ねぇ、おじいちゃんがまた変な事言うんだ、パパ、おばあちゃんてどんな人?」

「え?ああ、おばあさんは、パパが生まれた時に死んじゃったみたいだからパパも良く知らないよ。写真も戦前のは何も残らなかったらしいしね、

おばあさんの事は、

おじいさんしか知らないんだよ。」








end

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