海は何処までも海であるかの様に、眼を凝らしてもその終りは映らない。それでもその対岸、果てには、此方と変わらぬ賑やかな町並みがあるのだろう。そして時たま私と同様の思いに耽りながら、此方をながむ人でさえ何人とあるのだろう。

「…それでも、」


あの子を。

あの子を知る人が、果たして。私の他にあるだろうか?

「居ない、のだ。」


私は目線を落とし爪先まで迫る波を見た。
ゆらゆら、形を留めない白い泡の列が、右足の先に触れた。

「――行ってみようか。」

私は小さな決心と共に、微かに湿った右足を引いて体を右側に向けた。そして海沿いに浜辺を歩く事にした。

そう、あの日と同じように‥。

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