目が無い少女は盲目だ。そりゃあ目が無いのだから当たり前なのだろう。けれど少女は殺人鬼だった。
少女は齢たった十二にして既に五人殺していた。
それはどれも事故と言ってしまえばそれだけで終わってしまうようなものばかりだった。例えば、ナイフを振り回していたらたまたま人を刺してしまったなどと言うものだ。少女に殺人の意思が無いため、それらは全て事故として片付けられた。
そんな少女の不運な犠牲者の中には私の可愛い妹もいた。妹は不運な事に少女の友人だったのだ。ただしこれを不運だと言ったのは私が客観的にみての事だから、少女の事を毎日楽しそうに話していた妹が本当に不運だと思っていたのかは定かではない。
けれど私はきっと不運に違いないと思う。思いたい。思わなければいけないのだ。そうでなければ私は少女と同じ殺人鬼になってしまう。だって私はその齢十二の殺人鬼を殺めてしまったのだから。



少女を殺すことはたやすかった。なんせ少女は盲目なのだ。少女は私との会話を笑顔でしていた。楽しんでいたのだろう。だってまさか自分が刺されるなんて思いもしなかったのだろうから。
会話をしながら狙いを定め、心臓を一突き。そうしたら少女は胸を赤くさせてだらりと力無く倒れた。
やったと思った。妹の仇がとれたと喜ぶ。けれど私は涙を流していた。後悔したのだ、少女を殺した事を。妹の仇をとってしまった事を。

少女はきっと私に惚れていたのだろう。
だって少女は他の誰に向けるよりも素敵な笑顔を私に向けていたのだから。
そんな私もきっと少女に惚れていたのだろう。だって瞳から涙が溢れるのだから。


からっぽの少女の顔の二つの穴にぽたぽたと水がたまった。
(あふれたのは私じゃなくて少女の涙だったかもしれない。)