「貴方は死にたいのですか?」


何の前触れもなく現れた少女は僕にそう言った。


「………」


僕は何も言わない。


「困ったですね。何か返答をして頂けますか?」


表情を変えず、全く困った様子のない少女が言った。


「………」


僕は何も言わない。


「では、もう一度お聞きします。貴方はいきたいのですか?」

「…質問が変わってる。」


思わずツッコミを入れた僕に、少女は表情も変えずに言った。


「なんだ喋れるじゃないですか。さぁ、私もこの時期は忙しいのです。返答をして頂かないと仕事ができません。貴方は死にたいのですか?」

「うん。…と言ったら君はどうするんだ?」

「冗談ならやめてください。危うく首を絞めてしまうところでした。」

「うんと言ったら首を絞めるの?」

「えぇ、私は貴方の自殺のお手伝いをしたいと思います。絞殺が嫌なら言ってくださればどんなのでも良いですが、私は首を絞めるのが一番好きです。」

「君の趣味なのか…」

「はい。武器に頼るのはあまり好きではないです。」

「君はいくつだい?小学生に見えるんだけど…。」

「失礼極まりないですね。中学生です。」


対した変わりはないでは無いかと思ったが口には出さなかった。


「なんでそんな歳で人殺しなんかしてるの?」

「人殺しじゃないです。お手伝いです。ボランティア。この歳でボランティアなんて私物凄くいい子じゃないですか。」

「いい子は人殺しなんてボランティアでもしないと思うけどね。」

「それもそうですね。」


表情があればこの子も少しは可愛げがあるのだろうが、無表情だと怖いことこの上ない。


「…さて、大分話がそれてしまいました。この時期貴方みたいな方が多くてですね、私も暇ではないのですよ。」


少女は無表情のままはぁとため息をついて肩を竦めた。


「さぁ、質問の返答を要求します。」

「それは最初の質問の?それともさっきの?」

「どちらでも構いませんが。」

「ではYesだ。」

「承りました。」


次の瞬間少女は馬乗りになるとそろりと僕の首に細く小さな手をそえた。



「また何れ逢いましょう。」



細い手からは想像できない力で首を絞められた。



***



「人間は馬鹿だから同じ過ちを繰り返す。だから貴方は死んで生き返ってもまた同じ過ちを繰り返すでしょう。」



See you again…