私が目を失った時、もうなにも見なくていいと言われた気がした。
目が見えなくなってから私が感じた事は不便だな、とただそれだけで。何故私にあった人達は口々に哀れみの言葉をかけるのか私は不思議でしかたがなかった。
「だって別に哀しくはないし…」
見えないことに不満はない。むしろ見なくていいのだと安心感があった。綺麗なものも汚いものも美しいものも醜いものも、私は見なくていいのだと。
「どうせなら耳も…」
そうしたら私は一生この部屋で、与えられた食事をたべてひっそり孤独に生きようではないか。
生れつき、目も耳もはたまた口も聞けなかった彼女には悪いけれど、私は今とってもあなたがうらやましい。
ヘレン・ケラー
(割れたガラスの破片だとか、怒鳴り声だとかそういうものが聞こえない貴方が私はとてもうらやましい)