SHORT



黒「あの名前さん・・・?すみません」
 「どしたの黒子君?」

ドンッ!!

 「・・・ヒギャッ?!・・・・・・えと、なに?」
黒「やっぱびっくりするだけですよね?」
 「・・・いやいやいやいやいや!!黒子君は今何をしたかったの?!」
黒「普通に壁ドンですけど?」
 「普通に壁ドンってなに?!普通の壁ドンってなに?!」

部活が終わり私は体育館で得点版を片付け終えたところだった。
黒子君は何故か私と一緒に帰ると言って片づけにまで付き合い
そして何故か壁際にいたときに黒子君になんの前触れもなく壁ドンをされた。
ドキッとした。もちろん別の意味で。壁にいきなりイグナイトパスしてるなし。

黒「ドキドキしませんでしたか?」
 「別の意味でドキッとしたよ!!!」
黒「名前さんってどういうときにドキドキするんですか?」
 「え?・・・それって異性にされたらってこと?」
黒「はい」
 「ええ・・・そんな急に言われても・・・・・・。
 ああでも顔近づけられたりしたら少しはドキドキする・・・・・・って顔!!顔近いよ!!黒子君!!」
黒「ドキドキしましたか?」
 「意味が分からない!!びっくりするだけだよ!!」
黒「名前さんをドキドキさせるのって難しいですね」
 
まったく意味が分からない。私をドキドキさせるゲームでも流行っているのだろうか。
それなら止めてほしい。
もともと黒子君は影が薄いから後ろにいることに気付かないときとかタダでさえドキッとしているんだから。
どんだけ寿命縮ませれば気が済むんだよ。

黒「それじゃあ手を繋いで帰りましょう」
 「え?手・・・?別にいいけど」
黒「ありがとうございます」

そう言ってほほ笑んだ黒子君が可愛かった。思わずキュンとした。
・・・キュンとした?!

 「黒子君・・・キュンとした!!」
黒「は?」
 「今の顔・・・もう一度お願いします・・・!!」
黒「・・・嫌です。・・・なんか恥ずかしいです」

そう言ってそっぽを向く黒子君の耳が赤いことに気付く。

 「ごめん、赤面してる黒子君に不覚にもキュンとした」
黒「あんまり顔見ないでください」
 「やだ、なんか黒子君!!可愛い!!こっち向いてよ!!」

悪戯に繋いでいる黒子君の手をブンブン振って「可愛い」とはやしたてた。
少し拗ねたような表情をしていたが急にいつもの表情に戻ってこっちを見た。

黒「分かりました。」
 「え?なにが?」
黒「名前さんはドキドキはしませんがキュンとはします」
 「・・・え?ドキドキもするしキュンともなるよ普通に」
黒「それじゃあ・・・」
 「え?え?・・・いやあの、黒子君!!私まだ心の準備がぁぁぁぁああ!!」

黒子君は目をつむって顔を近づけてきた。
バスケ部の中では小柄なのかもしれないけど168センチもあれば私よりは普通に大きい。
このとき初めて黒子君が男の子だということに気付いたような気がした。変な話だけれど。

 「ほ、本当に・・・し、しちゃうの・・・・・・?

自分の声が小さくなっていくのが分かった。
黒子君の綺麗な顔がすっごく近くにある。女の私より肌は綺麗だ。まつ毛も長い。
リアルで目と鼻の先で心臓がうるさい。聞こえちゃうじゃん馬鹿!!


黒「です」
 「え?」


まだ呆然と立っている私から黒子君は離れた。そして笑って「嘘」だと言った。


黒「嘘です。考えてもみてください。彼女でもない人に僕がキスすると思います?」
 「・・・・・・。えぇぇぇぇぇぇえ?!」

不覚にもドキドキしてしまった私の純情を返せ!!

黒「でもちゃんとドキドキしてたみたいですね。心臓の音聞こえましたよ?」
 「黒子君の馬鹿!!嫌いだ!!大嫌いだ!!うわぁぁあ!!」
黒「あ、すみません。からかったつもりは半分くらいだったんですけど」

「からかうつもり」あったのか!!!本当に腹の中真っ黒だな!!

黒「でも名前さんがドキドキする顔見たかったんですよ半分は、」
 「は、半分はって・・・!!責任とってよ馬鹿!!黒歴史になっちゃうじゃあん!!恥ずかしすぎて穴があったら入りたいよ!!!!」
黒「分かりました。」
 「え?」
黒「責任とります。名前さん、付き合いましょう」
 「・・・・・・・・は?」
黒「名前さん、僕の彼女になってください。そしたら責任とってさっきの続きできます」

本当に意味の分からない奴だ。


黒「今の告白・・・ドキドキしましたか?」
 「・・・キュンとしたよ馬鹿野郎!!」

つまり答えは「YES」。
なんでこんな奴のこと大好きなんだろう。影薄いしパッとしないし腹の中真っ黒なのに。
それなのに手を繋いでいるだけで私の心臓は確かにドキドキと脈を打っていた。これからも。その先も。多分ずっとずっと。
―END―



  

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