SHORT


ウ"ゥ"ゥ"ゥ"・・・!!ウ"ゥ"ゥ"ゥ"・・・!!

「うっさい!!」

土曜日の朝。今日はバスケ部での部活も休みだ!!
だからバスケ部のマネージャーの私もせっかくの休みになった土曜日を満喫をしようとしていた。
満喫する方法なんてただ1つ。・・・昼まで寝る!!
それをたった今バイブの音で台無しにされたことで私は不機嫌だった。

ウ"ゥ"ゥ"ゥ"・・・!!ウ"ゥ"ゥ"ゥ"・・・!!

ひっきりなしに鳴っている携帯の液晶ディスプレイを
見てみると「黒子テツヤ(天使)」と表示されていた。
天使の黒子君からの電話なら話は別だ。夜中の3:00でも電話に出ちゃうよ。

 「もしもし?黒子君?」
黒「名前さんですか?今家にいますよね?」
 「え?うん。そりゃ今まで寝てたからいるよ?」
黒「・・・すみません。一回家の外に出てもらっていいですか?」
 『は?』
黒「でわ待ってます」

ブチッ

黒子君が私の家の前まで来ているとは何事・・・?!
何かあったに違いないと予測し私は30秒で早着替えをし
家の前で待っているであろう天使のために玄関の扉を開けた。
   *   *   *

黒子君はそこに私服で立っていた。
いつもは見れないレアな黒子君に普段の私だったら目が行っていたであろう。
しかし私の目はそれよりも黒子君が手を繋いでいる小さい男の子の方にいった。

黒「ほら?名前さんですよ?」
?「ちっす!!」
 「お、おはよう・・・ございます」

でも待って。この子どこかで見たことある気がするんだけど・・・な。
うん、この黄色い感じとまつ毛が無駄に長いのと湧き出る美男オーラ!!
もしかしてまさかまさかの・・・?

 「えと・・・黄瀬君?」
黄「オレリョータっていうッス!!」
 「えぇぇぇぇぇぇえ?!どうしちゃったのこんなかわいくなっちゃって!!」
黒「昨日色々あって黄瀬君の家に青峰君と泊まりに行って朝起きたらこうなってました」
 「なんていうエロゲだよ」
黒「しかも困ったことに今の黄瀬君には5歳児までの記憶までしかないそうです」
 「リョータ君は今何歳なのかな?」
黄「5歳ッス!!」

小さくなってしまった黄瀬君にかがみこんで聞くと
リョータ君は上手に5本指を突き立て元気に答えてくれた。・・・か、かわいい!!

 「それで青峰君はどうしちゃったの?」
黒「色々てんぱってオムツ買に行きました」
 「5歳児ってオムツ必要なのか?」
黒「青峰君がアホなのは今に始まったことじゃありませんが」
 「アホって言っちゃったよ黒子君」
黒「僕には色々分からないことがありすぎて女性のほうが
  母性本能とかあるんじゃないかと思って連れてきたんですけど・・・」

「なんとかなりませんかね?」と言う黒子君の目は本当に困っているようだった。
まあ今日1日くらいは面倒を見てあげてもいいんじゃないかな。
こんなカワイイ黄瀬君もう二度と見れない気もするし。

黒「僕は赤司君に伝えてきます。黄瀬君がどうやったら元に戻るのかを調べてきますね」
 「うん、そうだね!赤司君ならなんか色々分かりそうだし」
黒「一生そのままでいいんじゃないか?とか言いそうな気もしますけど」
 「私もそう思うんだけど」
黒「僕は嫌です。天使キャラが被ります」
 『え?』

色々ツッコみたいことは山々だったが早いとこ黄瀬君を戻すことが重要なので
私は黒子君を赤司君のところへ向かわせた。
   *   *   *
家には私1人しかいなかったので母親に
「誰?その子?もしかしてアンタの隠し子・・・?!」とか言われることもなさそうだった。

黄「お姉ちゃんのことは何て呼べばいいッスか?」
 「いつもどおり名前っちでいいよ?」
黄「いつも通り・・・?」

ああ、そうか。リョータ君の記憶は何故か5歳児までの記憶しかないのか。

黄「じゃあ名前っちって呼ぶッスね!!」
 「お姉さまでもいいんだよ?!」
黄「俺のことはリョーちゃんでいいッスよ!黒子っちが俺のことそう呼んでるッス」
 
私の「お姉さま」は無視かクソガキ。
そして黒子君が黄瀬君のことを「リョーちゃん」とかウケ狙いとしか思えない。

 「リョーちゃんお腹空いてる?朝ごはん食べた?」
黄「そういえば朝から何も食べてないッス・・・」
 「ドタドタしちゃってたんだろうしね・・・私もまだだから一緒に食べよ?」

そういうとリョーちゃんは目をキラキラと輝かせた。
こういう表情は大きい黄瀬君ともあまり変わらない気がする。
朝ごはんと言ってももうお昼に近いからブランチということになるかな。

黄「なに作ってるんスか?」
 「ホットケーキだよ!」
黄「ホットケーキ!!」
 「あ、リョーちゃんお皿並べてくれないかな?」
黄「分かったッス!!」

トテトテと可愛い音を鳴らして食器棚に近づき危なっかしくお皿を運ぶリョーちゃん。
気が利くのかフォークまでもちゃんと2人分出してくれた。よく出来た子だ。
ちなみに私は料理が並み位にしか出来ないからホットケーキの味に保障はない(断言)

 「アイスあるけどホットケーキに付ける?」
黄「わあ!つけるッス!!」

アイスを乗っけてあげると嬉しそうにホットケーキを食べ始める。
食べ方も普通に綺麗で机や口の周りを汚すこともなかった。本当によく出来た子だな。

黄「お皿洗ったほうが良いッスか?」

食べ終えた後リョーちゃんのこの一言に感動した。
黄瀬君!!やっぱり君はリョーちゃんのままでいるべきだ!!


ウ"ゥ"ゥ"ゥ"・・・!!ウ"ゥ"ゥ"ゥ"・・・!!

食後、私がお皿を洗っている時に携帯のバイブが再び鳴った。
電話してきた相手は予想通り黒子君だった。


黒「さっき赤司君に事情を話にいきました」
 「・・・で、どうだったの?」
黒「そんなことは初めてだけど大丈夫だろ?
  時間が経てば戻ってるよ。そういうものだから。
そう言ってました。」
 「そういうものなの?!」
黒「赤司君のいうことは全て正しいので大丈夫です」
 「・・・・・・。」
黒「とりあえず今から名前さんのとこへ向かいます」
 「待って。忘れてたんだけど青峰君はどうしたの?」
黒「色々テンぱってオムツ買いに行ったら青峰君の親御さんに勘違いされて
  大変なことになってるみたいです。どこの女の子との子供なの?とか聞かれてるみたいです」
 「お疲れ様です」

青峰君が今回の件を黄瀬君のせいにして1on1にしばらく付き合わないに500円賭けよう。

そう思いながら電話を切るとリョーちゃんが座っている私の上に乗ってきた。
いきなりどうしたのかと思いリョーちゃんを見ていると
子犬のようなウルウルした目を向けて口を開いた。

黄「だ・・・抱っこしてほしいッス・・・・・・

甘えん坊なところは大きい黄瀬君とは変わっていない。
大きい黄瀬君は少しウザかったけど今のリョーちゃんなら天使そのものだ。
優しく「いいよ」と言ってギュッとするとリョーちゃんはそのまま安心して寝てしまった。

   *   *   *

ピンポーンピンポーンピンピンピンポーン・・・


ちょ、どんだけ家のピンポン(チャイム)鳴らしてるんだ!!
ってツッコみを入れられることを覚悟して僕は名前さんの家のチャイムを押した。


しかし恐る恐ると言った感じで出てきた人物にしばらく僕は動けないでいた。

黄「く・・・・黒子っち?」
黒「え・・・黄瀬君なんで元に戻ってるんですか?」
黄「あの黒子っち・・・聞きたいことがあるんスけど」
黒「なんでしょう。僕も黄瀬君に聞きたいことがあります」
黄「なんで俺は名前っちの家にいるんスか?」
黒「黄瀬君がリョーちゃんになってたからです」
黄「起きたら名前っちが隣で寝てて俺の服が無くて・・・名前っちのお父さんらしき人の服借りたんスけど・・・」

つまり黄瀬君に着せた小さいサイズの服はどこかに行ってしまったのか。

黄「それでそれで・・・名前っちが・・・」
黒「すみません。あまりその先は聞きたくないんですけど」
黄「名前っちが俺が着替えている間に5歳くらいの女の子になっちゃってたッス!!」
黒「・・・・・・。」
黄「俺どうしたらいいか分からなくて家に帰るわけにも行かなくて・・・
  で、でも名前っちの着てる服ダボダボなんスけど着替えさせるのも俺
  男だからっていう理由で断念したんスけど・・・えと、えと!!」
黒「黄瀬君、大丈夫です。そのうち元に戻りますから」
黄「え?そ、そうなんスか?!」
黒「はい。だから僕は帰ります。それでは」
黄「えぇぇぇぇえ?!ま、待ってくださいッス黒子っちぃぃぃい!!」

やっぱ黄瀬君はリョーちゃんのままでいるべきでしたよ。
そう小さく呟いて僕は今度は青峰君を助けに行くことにした。
部活あったほうが何倍も有意義な土曜日だったに違いない。僕はつくづくそう思った。
―END―


  

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