SHORT


初めに言っておこう...。
我ら秀徳バスケ部マネージャーの苗字名前ちゃん。
彼女は世間で言う“腐女子”である。


普通にしていればそれなりに見て呉れのある容姿だけど
やっぱり話すことが俺には理解できない。普通に引くときもある。

そんな彼女が俺ら2人と仲が良いのは訳があった。たいして深くはないけどね!
 

 「真ちゃん部活終わったらアイス食べに行こうよ!!」
緑「・・・行かないのだよ」
 「えぇー?!なんで?!高尾君は?」
高「真ちゃん行かないの?じゃあ2人だけでデートしちゃおっか?(はーと)」
 「普通に高尾君キモい...」
高「ヒドッ!!普通に名前ちゃんヒドい!!」
 「私は高尾君と緑間君が仲良くアイス食べて、
  "真ちゃん!ここにアイスついてるよ?俺が食べてあげるね!!""やめるのだよこんな人前で・・・(照)"
 そして高尾君が真ちゃんのお口の周りをペロリンコして...いやぁぁあ萌える!!半端ない!」


勝手に1人で想像してその場でジタバタする名前ちゃんを
俺はニコニコしながら見ていたが心の中では真ちゃんと同じ顔。
つまりドンビキの表情を浮かべていることを本人に言えるわけもなかった。

   *   *   *

なんだかんだで流れに乗せられてしまった真ちゃんと俺は
学校の近くにあるいつものコンビニの前で棒付きアイスを食べる。


高「そういえば2人は高校卒業したらどうすんの?」
緑「まだ決まっていないが大学に行ってバスケを続ける」
高「ああ、やっぱそうだよね。俺もバスケは続けたいし!名前ちゃんは?」
 「・・・私は両親が厳しいから国立大学行くんだあ」
高「国立・・・?」
緑「名前が・・・?!」


いきなりの現実に2人でギョッとする。
俺は「私?私はBL本を描く漫画家になるよ!!ははははは!!」
とか言う答えなんじゃないかと思っていたからシリアスな答えに拍子抜けした。


高「それじゃあ勉強とか大変なんだね・・・?」
 「勉強ばっかで家にいるとお母さんが好きな漫画読ませてくれなくてさ、特に同人誌」
高「うん、それ俺が親でも同人誌(R18)だけは子供に読ませたくない」
 「・・・私が国立行ったら皆と離れ離れになっちゃうね」


・・・。
分かってはいたけど3人が別々の時間を歩むことになるということを
初めて実感したような気がした。この時間は永遠じゃない。


緑「何を言っているのだよ」
 「「?」」
緑「今は携帯もあるしパソコンだってあるのだよ。
  名前のことだ。どうせスカイプとやらに頼って
  寂しくなったら構って欲しさに迷惑をかけるのだよ。何年先もずっとな」
高「真ちゃん・・・」
 「あはは!!そうだねきっと卒業しても2人には迷惑かけちゃうね!!」


そう言って名前ちゃんはハズレだったアイスの棒を見て歩き出した。


 「私頑張るよ!だから手、繋いで帰ろっか?」
緑「なにが"だから"なのだよ」
高「いいじゃん真ちゃん。なに照れてるの?もう高校生でしょ?
  女の子と手を繋ぐことくらい慣れておかなきゃダメじゃない!!」
緑「お母さんかお前は」


真ちゃんは渋々だが差し出された小さい名前ちゃんの手を握った。
俺は反対側の名前ちゃんの手を握る。
「両手に花だね名前ちゃん!」って言うと名前ちゃんは笑って


「2人が手を繋いでくれることを期待してたんだけど」と言った。


あー、はいはい。そんなのはお見通しだったんだよ名前ちゃん。


 「2人に彼女できたらこんなこと出来なくなるね」
緑「彼女がいなくても二度とやらないのだよ」
高「いいじゃん別に、彼女いようがいまいが手くらい繋いだって」


・・・だって俺らは3人で親友なんだから。
トライアングルみたいに。3人じゃないと鳴り響かない音だってある。
だからいつか離れてもまた3人でアイス食べような?
―END―



  

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