SHORT



誰にだって異性に求めるものはあるでしょ?
それは私にだって同じ。
もちろん、性格だって容姿だって大事だと思う。
でもさ・・・“フェチ”って・・・あるでしょ?


赤「何やってるんだ?」
『いや、いい腹筋してるなぁ・・・って思って・・・』


つまり私にとって好きで好きで仕方ないものは腹筋。
腹筋なら何でもいいってわけじゃない。
割れ方とか動き方とか・・・そういうのがベストなのが今のところ赤司君だったのだ。

黄「名前っち殺されるッスよ?!」
『んふふ〜///』
青「おい!よだれ拭け、よだれ」
緑「率直に言うとキモイのだよ」
黒「キモいです(バッサリ)」


ちなみに今は赤司君を後ろから抱きしめる形で腹筋を触っている最中。
私が好きなのはあくまで
“赤司君の腹筋”であって赤司君じゃないから
そこらへんは理解してほしい。


 「言葉責めなんかにはメゲないよ私は。
 なぜなら私は赤司君の腹筋が好きでマネジになったんだからね(どやッ!!)」
緑「そんなどや顔して言うことじゃないのだよ」
 「なに?文句あるなら私好みの腹筋になってから言いなさいよ!!!」
緑『どうしてそうなるのだよ?!』

ちなみに言うと赤司君は別に嫌がる素振りを見せていない。
まあポーカーフェイスだけなのかもしれないけど。

練習中は触るの我慢してるし、試合中だって我慢してる。
触るのは休憩時間とか放課後とか。
これでも場所とか時間とか状況とか空気を読みながら触っているのだ。



だから私は何も悪いことはしていない。(断言)


青「っつか、前から思ってたけど赤司も赤司で嫌じゃねぇのかよ?」
赤「別に暴力をふるわれてるわけじゃないしね。
 俺的には全然かまわないさ。
 ただ、他の人からの目が気になる。キャプテンとして
 女子と練習中にたわむれてるなんて思われたくないからね」
黒「さすが赤司君ですね。」
赤「それに彼女が俺の腹筋を触らないことで
 ストレスが溜まり寝込んだりしたら
 マネージャーとしての仕事をこなせなくなったら困るのは俺達だからね」
青「別にサツキ1人で十分だろぅ・・・(ボソッ」
「あ?青峰君、君ね、次にそんなこと言ったら、この私が素手で去勢するからな?」
青「あ?」
『んだ?ごるぁ?』
黄「名前っち、青峰っちと喧嘩するの止めてくださいッスよ!!」
紫「峰ちん、名前ちんのことイジめるの止めなよぉー!!」
青「イジめてねぇよ?!」
 「うわぁあん!!!桃井ちゃあん!!青峰君があ!!」
青「おい、おまえ・・・」
赤「女子をイジめるとは見逃せないな。」
青『っつかお前も今の状況見てただろ?!
  ツッコむの面倒くせぇからお前までボケんなようぜぇな!!』



最初に赤司君の“腹筋”に恋に落ちた日のことは忘れない。
一回だけ同じクラスで仲が良かった桃井ちゃんのマネージャーの仕事が
どんなものかと興味を持ったことがあった。
桃井ちゃんに前から誘われてたこともあって部活見学に行った。


私が部活見学に行ったときは制服から体操服に着替える時間だった。
帝光中学校のバスケ部は部員数100を超えるので
とても更衣室に全員入らない。
だから1年生は仕方なく体育館で着替えていた。




・・・うわッ、すさまじい男の宴だな。



なんて思っていたのを覚えている。
その時やけに髪の毛の色が目立つ男の子に目がいった。

バスケ部のわりには小柄で顔は童顔。白い肌は陶磁器のようでそして目立つ赤毛の男子。
なんの躊躇いもなくYシャツを脱ぎ捨て体操服を着た。
その一瞬だったが、綺麗に引き締まった体と腹筋が自分好みすぎるのを私は見逃さなかった。

もちろん、その日のうちに私は桃井ちゃんと同じ
バスケ部のマネジの称号を手に入れた。

   *   *   *

・・・でもって、次の日に


「あのさ、腹筋触っていい?」
赤「?!」


シュート練習の時間に私は赤司君に近寄りながら
いかにもマネージャーの仕事をしてますよ風に赤司君の脇から出て喋りかけた。

さすがの赤司君でも驚いてた顔は
不覚にもカワイイと思ってしまった。今でも思う。


赤「断る理由はないけど、断わらさせてもらうy」
 「やっぱいい腹筋してるね・・・!!うわあ!すごぉい!!動いた!!」
赤「君、人の話聞いてるのか?」
 「喋ったときの微妙な動き方がツボだ・・・」


周りからの目はスゴかった。
それは私を変態だと認識する目じゃなくて
アノ赤司君にこんなことをしていたからだった。

けれど私は赤司君の怖い噂を耳にしたのは大分
後になってからのことだったし特に何もされなかった。
だから今でも赤司君の腹筋をイジり続けている。


でも最近は普通に赤司君のことも好きだ。
なんていうのかな?
一緒にいて飽きないしボードゲームも教えてくれた。

確かに普段は強烈な性格だけど中身は優しいことは知っている。

   *   *   *

赤「他の奴の腹筋とは何処が違うんだ?」
「堅さとか動きとか割れ方とか・・・。
 ほら?男子にもあるでしょ?例えば胸!!
 胸の柔らかさとか大きさとかで胸の好みも違ってくるでしょ?」
黄「ちょッ!!なんつうこと赤司っちに言ってるんスか?!」
緑「もう名前には付いていけないのだよ・・・」
黒「・・・(遠い目)」
青「とりあえず名前、病院行って来い」
『あぁ?!んだとごるぁ?!』
紫「また始まった・・・」
 「っていうか私は赤司君のことも好きだよ?
 いくら大好きな腹筋でも嫌いな男子のなんか触らないでしょ?」
全『『えっ・・・』』


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・ん?
待てよ?なんだい?この長い沈黙は?



 「え、いやアレだよ・・・そういう意味じゃなくて・・・」
黄「名前っち・・・そういうことだったら、もっと早く言って欲しかったッス」
「え、ちょ、黄瀬君・・・何言っt」
青「今日は赤司と2人で帰れよ?サツキは俺が送るから』
「なに急に優しくなって・・・キモいんだけd」
緑「今日の恋愛運が一番良いのは射手座で赤司なのだよ」
 「いや、聞いてないから。っつか皆、何言って―」
黒「・・・ファイトです!!」
 「「え」」
紫「名前ちん・・・頑張れ」
 「何を?!」
桃「名前ちゃん・・・名前ちゃんにもついに春が!!」
 「ち、違うんだよ桃井ちゃん?!」

赤「それじゃぁ、名前。俺達は帰ろうか?」


もちろん、赤司君は私の困る顔が見たかっただけなんと思う・・・。

「ちょ、アナタまで何を言ってるんですかね?この空気で帰ったら私が本当に赤司君を・・・」

赤「別に好きでいいよ、俺は」

小さな声で呟かれた最後の言葉にキョトンとしながらも・・・
何故か顔が赤くなるのを感じながらも・・・
後ろで皆がニヤニヤしているのを感じながらも・・・

私は赤司君と2人で帰った。
ずっと喋りかけてくれたけど何を言われたのかも忘れてしまった。

翌日、変な噂が流れることになるのも知ず・・・
やけにウルさい心臓の音を聞きながら私は赤司君の隣で
妙な意識をしてしまっていた。
-END-


  

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